ウィリアム・モリスとは19世紀イギリスのデザイナー、詩人、思想家である。そのデザインは日本でも人気が高く、今でも各地でモリスの展示会などが開かれている。
概要
優れた芸術家であったモリスの目指したものは『日常生活と芸術の融合』であった。彼にとって理想の芸術とは、日常から離れた美術館でただ鑑賞されるものではなく、むしろ、人々の日頃の生活の中で生きる、そして生活を豊かにするものであった。モリスの生きた19世紀のイギリスは産業革命を端に発する資本主義社会の全盛期であった。彼は資本主義が生み出した大量生産、大量消費の商業主義によって、本来の機能と目的、そして芸術性を失った物を批判し、再び生活と芸術を結びつけるべく、中世的な理想を追求した。この動きをアーツ・アンド・クラフツ運動と呼ぶ。
資本主義社会の否定を前提とする『芸術と生活の融合』思想を持っていたモリスは、人間を労苦から解放する社会の到来を予言したマルクス主義を歓迎した。モリスはマルクスの資本論をはじめて読んだ時、その理論に大変感動し、その後常に資本論を持ち歩き熟読した。モリスは、マルクスのいうところの疎外された労働から人間を解放し、労働と芸術を融合させようと図った。モリスの目指した社会とは、労働=苦痛というアダム・スミス以来の世界の定式を否定した、労働=喜びとなる社会である。モリスの代表著作『ユートビアだより』はモリスの理想とする、まさにユートピアの世界が具体的に描かれている。しかし、その内容はエンゲルスによってあまりに空想的であると批判されている。(モリスが資本論を読んだ時点でマルクスは既に逝去していた)
関連項目
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