コールガールとは、
本記事では上記のうち1.について説明する。
概要
英語「call girl」。「call(コール)」はこの場合「電話での呼び出し」、「girl(ガール)」は(若い)「女性」を指す。
単語一つ一つの意味だけを見れば「電話で呼び出される女性」という意味しかないわけだが、実際には専ら「電話で顧客からの注文を受ける形で売春する女性」という意味合いで使用される。
売春の業態には他にも、路上で客引きを行うストリートガール(street girl)つまりいわゆる街娼であるとか、あるいは売春専用の店舗で売春を行うといった形式があるが、それらとは区別した呼び方である。
なお、男性がこの事業形態で売春することを「call boy」(コールボーイ)とも呼ぶ。
メリアム=ウェブスター社のオンライン英語辞典によれば、1912年には既にこの意味で「call girl」が使用された用例があるとのこと[1]。
日本でいつこの言葉が英語から翻訳されて広まり始めたのか、という時期については定かでない。
- 国立国会図書館デジタルコレクションにて「コールガール」で検索すると、1950年代からの医学雑誌・書籍・雑誌などでの使用例があることが確認できる。
- 昭和31(1956年)年5月11日の第24回国会 衆議院 法務委員会 第33号での「売春防止法」関連の議事において、日本社会党の神近市子議員が「私どもこの法律が通りましたあとで一番逃げ道と考えられるのは、今のコール・ガール制度でございます。これは、私のところに逃げ込んで来た二、三人の人がたちまち、まあある集団のアパート、部屋貸しの形式をとる有名なアパートですけれども、そこに入りまして、コール・ガールで電話一本でホテルに出張していた。そういう状態があるので、この場合私どもの一番考えなくちゃならないのはコール・ガール制度だと思います。」と発言している[2]。これが国会議事録の記録内で「コールガール」と言う言葉が登場する最初の例であるようだ。
- 1958年の書籍、前田信二郎『賣春と人身賣買の構造』内に「アメリカでは、街娼とコールガールとビイガールの三種が白線を形成する。コールガールは売春婦と業者が連絡をとり、客の注文に応じて好みの女性を幹旋する方法。」といった内容が掲載されている。
- アメリカ合衆国の心理療法士ハロルド・グリーンウォルドによる、売春に関して心理学的考察を加えた書籍『The Call Girl: A social & psychoanalytic study』が1958年にアメリカで発売されてベストセラーとなった。その翌年である1959年には『コール・ガール―一精神分析医の診断記録』のタイトルで日本でも翻訳版が刊行された。
- 昭和35年(1960年)度版の『犯罪白書』の、「売春防止法施行後の動向」の節にて、「従来は赤線区域でなかった地区に,あらたにモグリ売春宿が発生し,または,いわゆるコール・ガール組織やガイド組織を仮装する売春組織などの発生がみられるとされている。これと関連して,ポン引,リンタク屋,円タク運転手などによる周旋組織が形成され,一部には,暴力団がこれに結びついてきているともされている。」という一文がある[3]。
- 上記のハロルド・グリーンウォルドの『コール・ガール』も引き合いに出した、売春について扱った吉行淳之介の小説『コールガール』が1961年に週刊サンケイで連載開始され、翌年には書籍として出版された。
以上のような記録が確認でき、少なくとも1950年代前半ごろから日本でもカタカナ語「コールガール」として広まりだしたかと思われる。それ以前にも遡れるかもしれない。
一方、2021年現在の日本では、上記の「売春防止法」によっていくつかの脱法的なケース(個人間の愛人契約など)を除けば売春が違法となって久しい。その上、「電話の依頼を受けて性的なサービスを提供するが、売春は行わない」という合法的な業態として「デリバリーヘルス」(略してデリヘル)があり、こちらの方が格段に知名度が高い。デリヘルに従事する者が実際には売春行為を行っていてそれが露見したとしても、「違法なデリヘル嬢」というだけであって、わざわざ「コールガール」と古めかしい言い方に呼び換えられるようなことはほぼ無い。
よって現在の日本においては「コールガール」という言葉の知名度は低下して行っていると思われ、死語に近い状態になりつつある。ただし海外のニュースを紹介する報道記事などで、売春を行っていた女性についてこの言葉が用いられることは散発的にあるようだ。
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関連項目
脚注
- *Call Girl | Definition of Call Girl by Merriam-Webster
- *第24回国会 衆議院 法務委員会 第33号 昭和31年5月11日 | テキスト表示 | 国会会議録検索システム
- *昭和35年版 犯罪白書 第一編/第二章/二/3
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