ジェームズ・トービン(James Tobin、1918〜2002)とは、アメリカの経済学者である。1981年ノーベル経済学賞受賞
概要
- 金融経済学の父。ケインズの信奉者でマネタリストと戦った経済学者
- 「国民のための経済政策」や「トービン 金融論」などが日本語に翻訳されている。
- 日本ではトービンのqの理論で有名。他にも国際通貨取引に課税するトービン税の導入を主張した。
若き日のトービン
トービンが産まれ育ったのはイリノイ州シャンペイン、両親はごく普通の中産階級であった。1929年にアメリカで始まった世界恐慌はたちまち世界を覆い、若き日のトービンに影響を与えた。高校を卒業したトービンは特に受験勉強もしないままハーバード大学に全額奨学金学生として進学をする。そこでケインズの代表作一般理論にはまり、経済学の道を進んだトービンはハーバード大学の中でも特に際立った生徒に与えられる「スマ・クム・ローデ(ラテン語で最優秀の意)」を手にし、レオンチェフやシュンペーターなどと親交を育むなどその才能をどんどん開花させていった。
トービンの経済論
トービンはケインズの後継者として、政府は積極的に経済に関わっていくべきとして、当時はまだ不完全であったケインズ理論を数理的なモデルを構築することによってそれを補完するのが彼のライフワークであった。
とりわけ彼の名声を高めたのは、
の4つの発見である。
1.トービン税
トービン税とはトービンが1970年代に最初に提案した「金融取引に対して0.1〜0.5%の課税をする」という税金である。トービンはこの税金をIMF(国際通貨基金)などの国際機関が実施し、その税収は第三世界の貧困救済に用いるように提案している。
この税の目的は「投資家の投資スピードを短期的なものから長期的なものにすること」である。ここでは詳しく説明できないが、トービンが短期的な投資を良くないものと考えていたと覚えておけば良い。
仮にこの税金が0.1%で導入されたとすれば年間の税収は数十兆円。70年代ですらそうなのだから現代ではもっと高くなるだろう。
貧困国への支援は特定の思想や道徳から発生したものでなく飽くまで国際金融危機を防ぐ為とトービンは主張するが、マルサス的な考え(貧困国への支援は逆効果)が漂う当時の経済学会では理解されず、加えて世界同時に導入しなければ非導入国に投資が殺到してしまうため実施困難という現実を前に結局トービン税が施行されることはなかった。
2.トービンのq
トービンのqとは、株式投資における企業の評価という観点から考察した投資理論である。経済学部ならマクロ経済学で習う。公務員試験でもほぼ必須の知識と言える。
トービンのq理論
トービンのq理論は、次の式で表される。すなわち、
(トービンの)q=(株式市場で評価された企業の価値+負債総額)/ 資本の再取得価格
である。一見難しそうに見えるけど実は簡単なのだ。
株式市場で評価された企業の価値とは、発行した株価の総額で知ることができる。これは株を買う投資家の評価額でもある。これは意味的には、今持っている物(資本ストックと言う)で金儲けを続けたら今後どれだけ利益がでるか、を表している。
資本の再取得価格とは、企業が現在保有している資本ストックの全てをその時の資本財の価格で評価したもの。簡単に言うと、その時その企業が持っているものを全部売っぱらったらいくらになるか? ってことである。
これを踏まえてトービンのqを書き換えると。
q=(今後、商売で儲けられるお金+借金)/ 会社の一部(資本ストック)を売っぱらったら得られるお金
となる。このことから企業が投資を増やすべきか、減らすべきかが分かるのだ。
もし、q<1、つまり分母のが大きいときは、売っぱらった方がいいので企業は投資を減らすべきとなる。
もし、q>1、つまり分子のが大きいときは、もっと商売で稼ぐ為に投資を増やすべきと言えるだろう。
1990年代のアメリカでこのq値が跳ね上がり、経済学者の中にはまもなく市場崩壊がやってくると予想したものが現れ、実際にそのような状況が現出したためq理論の実証例となった。
完全に余談ではあるが、彼の研究拠点のイェール大学では「トービンのq、Tシャツ」が売っている。
3.トービットモデル(打ち切り回帰モデル)
トービンが1958年に開拓した計量経済学の一手法。経済モデルの外から与えられる独立変数(外生変数)を変えた時にそのモデルの内部の変数(内生変数)がどう変わるかを研究する時に用いられる。
アメリカではFRB(連邦準備制度理事会、アメリカの中央銀行)の公開市場機能の評価などにも用いられる。
4.ポートフォリオ理論
ポートフォリオとは金融市場とその支出決定、雇用、生産物、価格との関連性の分析方法である。
例えば株やFXなんかは成功したら沢山のお金が得られるが失敗すると逆に多くのお金を失う。そこでこれらを上手く組み合わせて最適化する。つまり「一番お金を得られて、なおかつ失敗する可能性が少ないようにできる株やFX、その他投資の組み合わせ」がポートフォリオである。
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