ポスト・トゥルースとは (ポストトゥルースとは) [単語記事]

ポスト・トゥルース / ポスト真実とは、現代的な現象である。

概要

2016年にオックスフォード辞典が「ワード・オブ・ザ・イヤー」に選んだ言葉。おそらくドナルド・トランプの選挙に絡んでリベラル陣営から広まったものと思われる。

ようするに大本営発表的なアレなのだが、これがデジタル時代に改めて注目されたことに注意を抱く論者と、一般普遍的なものであるとみなす論者に分かれる。前者に特有なのが、「嘘を嘘」と指摘されてもそれが大した影響がなくなっている、というものである。

ここで出てくるのが、またえらく古典のハンナ・アーレントであり、以下引用したい。

全体主義支配にとって理想的な被統治者は、筋金入りのナチス信者でも筋金入りの共産主義者でもなく、事実と虚構も真と偽の区別も、もはや存在しないような人々なのだ。

ーー『全体主義の起源』3巻みすず書房版より

この後にハンナ・アーレントは「何も信じない」が故に「全ても信ずる」こともできる、「軽信とシニシズムの同居」とまとめている。

こうした論考から、ポスト・トゥルースが現代的な現象である、という論者からは、ファクトチェックがこのような大衆には何ら効力がないのは、真実への信を捨て去ったからだ、とされる。つまり、「フェイクニュース」や「オルタナティブ・ファクト」がただの「嘘」と異なるのは、それが嘘であるという告発自体を無効化させてしまっている、という点にある。