アジ電車とは、アジテーション(扇動)の文言が書かれた列車のことをいう。スローガン電車とも言う。1970年代の国鉄で多く見られた。
概要
定義
アジ電車とは、経済的あるいは政治的な主張をする目的で鉄道会社の労働組合の構成員によって扇動ビラを貼り付けられたり扇動の文言を塗料などで書かれたりした列車のことをいう。スローガン電車ともいう。
鉄道会社が扱う列車の中には蒸気機関車やディーゼル機関車のように電車以外の列車があるのだが、「アジ電車」「スローガン電車」という呼称が定着している。
1970年代の国鉄のものが有名
アジ電車は、1970年代の国鉄におけるものが有名である(画像検索例1、画像検索例2)。この当時の国鉄において、使用者と労働組合の紛争が激化していた。
国鉄の労働組合の構成員は、多くの場合において、列車に文言を書き込むときに消石灰を水に溶いたものやチョークを使っていた。そのため、雨が降ったらすぐに消えてしまうものだった。
違法とされる可能性が高い
列車をアジ電車に仕立て上げる行為は違法とされる可能性が高い。そうした行為はビラ貼り闘争と呼ばれるのだが、「ビラ貼り闘争は不当な組合活動である」とする判例がある。詳しくはビラ貼り闘争の記事を参照のこと。また、リボン闘争の記事も参考になる。
鉄道会社の労働組合の構成員が列車をアジ電車に仕立て上げたら、不当な組合活動とされて日本国憲法第28条の保護を受けられない可能性が高い。そうなったら、刑法第261条の器物損壊罪で刑事制裁を受ける可能性があり、民法第709条の不法行為による損害賠償請求という民事制裁を受ける可能性があり、就業規則に基づいて懲戒処分を受ける可能性がある。
1970年代の国鉄アジ電車に書かれた文言の解説
この項目では、1970年代の国鉄アジ電車に書かれていた文言のなかで代表的なものの解説をする。
経済的地位の向上に関する文言は以下の通りである。
斗う団結 | 「闘う団結」という意味。斗は闘の代用として左派が好む漢字である(画像)。 |
当局マイッタカ | 「当局(権力者)よ参ったか」という意味。 |
合理化反対 | 人員の縮小をする合理化に反対し、雇用を守ろうとするもの。 |
反合 | 合理化反対のこと。 |
闘魂 | |
人並の賃金をよこせ | |
値上げ反対 | |
スト権奪還 | ストライキ権を奪還しようという意味。権は簡略した漢字(木へんに又)を使うことがあった。国鉄などの三公社五現業の労働組合は法律でスト権を剥奪されていた。 |
12.4スト決行 | 12月4日にスト決行する、という意味。法律で禁止されているのにストライキを決行すると懲戒処分の対象になるが、それでも決行する。 |
不当処分粉砕 | ストライキをすると、違法なストライキなので参加者が懲戒処分されることがあった。その懲戒処分を不当処分と見なし、撤回を求めていた。粉砕とは左派が好む表現である(検索例)。 |
不当弾圧粉砕 | |
国労 | 国鉄労働組合のこと。国鉄の労働組合の中でも最大勢力である。 |
動労 | 国鉄動力車労働組合のことで、構成員は列車の運転士が多い。もともと国労にいた者たちが分離独立した。国労を上回る勢いで労働運動をして「泣く子も黙る鬼の動労」と呼ばれた。 |
動労千葉 | 動労の中の千葉県支部のこと。成田闘争において空港反対派に加勢するなど独自の行動をとった。1979年に国鉄千葉動力車労働組合として正式に分離独立した。 |
全動労 | 全国鉄動力車労働組合のこと。社会党を支持する動労から1974年に分離独立した労働組合で、共産党支持である。 |
田中内閣打倒 | 1972年7月から1974年12月まで続いた田中角栄内閣の打倒を目指すという意味。 |
ロッキード事件糾弾 | 1976年2月に発覚した米国航空機企業ロッキード社の違法献金事件。田中角栄がロッキード社から金銭を受け取ったとされる。 |
反戦 | 1975年まで続いたベトナム戦争に反対すること。 |
三里塚連帯 | 千葉県成田市の成田空港における建設反対運動を三里塚闘争とか成田闘争という。動労千葉はこの三里塚闘争の反対派に参加していた。このため動労千葉の支配する車両にこのスローガンが書かれた。 |
ジェット燃料貨車輸送実力阻止 | 成田空港に飛行機用のジェット燃料を鉄道で運ぶことに抗議する意味。 |
石川氏奪還 | 狭山事件で逮捕・起訴され一審で死刑判決が下った石川一雄を奪還しようというもの。この事件を冤罪事件とみる立場からのスローガンである。 |
狭山差別裁判 | 「狭山事件の判決は被差別部落に対する差別意識によるものだ」という意味。 |
関連動画
関連静画
関連リンク
関連項目
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