スギヒラタケとは、キシメジ科スギヒラタケ属の毒キノコである。
概要
キシメジ科(近年の研究ではホウライタケ科とすることも)。所謂ヒラタケ型と呼ばれる、短い軸とフリルのようなひらひらとしたカサを持つ白いキノコである。スギヒラタケ属唯一のキノコ(いわゆる一属一種)。
晩夏から秋にかけて、名前の通りスギなどの倒木に生える腐朽菌である。
現在では毒キノコであると認識されている。食べると急性脳症を引き起こすことがある。毒性成分は2015年時点確定されていない。有効な治療法もなく、急性脳症などに対する対症療法が中毒治療の中心となる。
「地域の味」からの転落
上記説明で「現在では」としたのには理由がある。
かつてスギヒラタケは主に北陸地方や東北地方などで可食キノコとされていた。杉林で採れる数少ない可食キノコの一つとされており、地域特産の一つとされて缶詰の商品まで販売されていた程であった。
ところが2004年秋。それまで安全であるとされていたスギヒラタケによる中毒事故が相次いで発生した。中毒者は9県にわたってのべ59名にも上り、うち17名は治療の甲斐無く亡くなるという、まさに大惨事であった。事故の規模もさることながら、可食とされていたキノコが突然有毒化するという事例は例がなく、キノコ関係の研究者はこの現実に戦慄を禁じ得なかったという。
スギヒラタケに何が起きたのか?
それまで無害であるとされていたキノコが突然有毒化する。そのことに最初に思いつくのは、突然変異または採取地域の汚染などであろう。しかしながら、これらは可能性の一つではあるものの、現実的ではないとされている。被害者は皆同じ所でスギヒラタケを収穫した訳ではなく、それらの全てが同年内に有毒化及び従来種以上の繁殖力という二つの変異を獲得し、勢力図を塗り替える程急速に繁殖するというシナリオは、無い訳ではないがあまりにも「出来過ぎ」と言えるだろう。
それでは何が起こったのか。これは吹春俊光農学博士の説であるが、「スギヒラタケは元々毒キノコであり、相応に犠牲者も出ていたが、誰もその事実に思い至らなかった」という説が挙げられている。スギヒラタケ中毒は食後1週間も経ってから発生することもある程発生が遅く、また必ず中毒が発生するわけではない(腎機能が低下している人が多く発症している)という特性もあったため。食中毒として関連性があると考えられていなかったとするものである。ところが2003年に感染症法が改正され、急性脳症が全数把握対象疾患に指定されたことで、急性脳症が多く発生していることが明らかになり、そこから調査されることで初めて毒性が明らかになったのではないか、というものである。
なお、研究を進めている論文が存在する。→スギヒラタケ急性脳症事件の化学的解明の試み
また、農林水産省から、スギヒラタケは食べないように、との注意喚起がなされている。 → スギヒラタケは食べないで!
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