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チロシン
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チロシン(Tyrosine)とは、芳香アミノ酸である。4-ヒドロキシフェニルアラニン

概要

有機化合物
チロシン
チロシン
基本情報
英名 Tyrosine
略称 Tyr, Y
化学 C9H11NO3
分子量 181.19
化合物テンプレート

チロシンは、4-ヒドロキシフェニル基をもつ芳香アミノ酸である。タンパク質を構成するアミノ酸で、極性・電荷の側鎖をもつ。ドーパミンアドレナリンなどの前駆体となる。ヒドロキシ基(-OH)の位置によって3種類の異性体があるが、フェニルアラニン-4-モノオキシゲナーゼによってフェニルアラニンから合成されるのはp-チロシンのみである。

チーズのカゼインから発見されたため、ギリシャ語チーズを意味する“Τυρί”より命名された。3文字略号は“Tyr”だが、1文字略号はトレオニンとの重複を避けるため“Y”が割り当てられた。

発酵の進んだ納豆は、その表面にチロシンのい結晶が析出してくる。じゃりじゃりとして味が多少損なわれる。タケノコもしばしばチロシンが析出している。いずれも、食べてもはない。

チロシンはサプリメントとしても販売されている。ドーパミンなどの神経伝達物質の前駆体であるため、神経の活性化やストレス緩和などを期待して配合されるようだ。また、チロシンはや皮膚の色素であるメラニンの合成にも使用される。

食物発酵や腐敗によるチロシンの脱炭酸により、チラミンが生じる。チラミンはワインチーズチョコレートなどに含まれており、血圧上昇の一因となる。チラミンは片頭痛の誘発因子として知られているが、『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』によれば、むやみに食べ物を制限することはかえって患者のQOLを低下させる場合もあるため、アルコール以外の食品については摂取制限までは推奨されていない。

合成

植物や微生物は、チロシンなどの芳香アミノ酸合成経路をもつ。解糖系のホスホエノールピルビンPEP)とペントースリン経路のエリトロース-4-リン(E4P)の縮合から始まるシキミ経路によって合成される。

PEP + E4P → …… → コリス → プレフェン → …… → チロシン

動物は、フェニルアラニンの4-ヒドロキシ化によってチロシンを合成する。フェニルアラニン-4-モノオキシゲナーゼと補酵素のテトラヒドロビオプテリン(BH4)が作用して、チロシンとジヒドロビオプテリン(BH2)を得る。

フェニルアラニン + BH4 → チロシン + BH2

フェニルアラニンから合成できるためチロシンは必須アミノ酸ではないが、フェニルアラニンは必須アミノ酸である。ただし、フェニルアラニン-4-モノオキシゲナーゼの先欠損などでは、フェニルアラニンからチロシンへの代謝がうまく進まず、フェニルケトン尿症をきたす。

代謝

チロシンが代謝されると、代謝中間体としてフマルとアセトを生成する。フマルは糖新生の前駆体であり、アセトはケトン体であるため、チロシンは糖原生アミノ酸かつケト原性アミノ酸である。

チロシン → 4-ヒドロキシフェニルピルビンホモゲンチジン → 4-マレイルアセト → 4-フマリルセト → フマル + アセト

ホモゲンチジンを4-マレイルアセトへと変換するホモゲンチジン-1,2-ジオキシゲナーゼの先欠損は、アルカプトン尿症の原因である。ホモゲンチジンを多く含む尿空気に触れ、化されて変するのはこの疾患の特徴である。症状としては関節炎などがある。

マリルセトアセターゼや4-ヒドロキシフェニルピルビンオキシゲナーゼの先欠損などは、高チロシン血症の原因である。高チロシン血症Iでは、肝機障害、有痛性の末神経障害、くる病などをきたす。難病法の対疾患(定難病)となっている。

神経伝達物質やホルモンの合成

チロシンは、ドーパミンアドレナリンなどのカテコールアミンの前駆体である。カテコールアミンは、神経伝達物質やホルモンとして作用する生理活性アミンである。チロシンがヒドロキシ化されドーパとなり、脱炭酸してドーパミンとなり、さらにヒドロキシ化されてノルアドレナリンとなり、N-メチル化されてアドレナリンとなる。

ドーパミン神経伝達物質、ノルアドレナリンは交感神経系の神経伝達物質、アドレナリン副腎髄質から分泌されるホルモンとして知られる。詳しい作用などはそれぞれの記事を参照。なお、ドーパレボドパ)は血液関門を通過しドーパミン合成に使用されるため、ドーパミンの作用不足に起因するパーキンソン病の諸症状の善などに医薬品として利用される。

チロシンは、甲状腺ホルモンのトリヨードチロニン(T3)およびチロキシン(T4)の前駆体でもある。ただし、チロシンに遊離ヨウ素が直接結合するわけではなく、チログブリンというタンパク質のチロシン残基にヨウ素が結合してモノヨードチロシン(MIT)やジヨードチロシン(DIT)となり、それらが縮合することでT3やT4となる。チログブリン分子内で合成されたT3およびT4は、濾胞腔内に貯蔵され、下垂体前葉より分泌される甲状腺ホルモンTSH)により血中に放出される。T3のほうが生理活性は強く、T4のほうが量は多い。体温上昇、心拍数増加、血糖値上昇などの作用を示す。

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1 ななしのよっしん
2020/10/27(火) 21:35:32 ID: gTIpWU/Wh6
チロシンサプリ飲んでやる気アップ」って記事見て気になってた
似非科学じゃないことが分かって助かったよ
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2 ななしのよっしん
2020/10/27(火) 22:11:03 ID: S2L5LjsIHz
>>1
念のため書いておきますが、本記事では、チロシンを摂取すればやる気アップするとは述べておりません。
神経の活性化やストレス緩和といった作用を発揮することを “期待して” 配合されるという話は書いています。
実際には、消化管での吸収率、代謝率、血液関門の通過率などを考慮しなければならないでしょうし
十分な数の被験者の協のもと、データをとらないと断定できないことだと考えます。
あしからずご了承ください。
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