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バリシチニブ(Baricitinib)とは、関節リウマチなどの治療である。販売名オルミエント®

概要

有機化合物
バリシチニブ
バリシチニブ
基本情報
英名 Baricitinib
化学 C16H17N7O2S
分子量 371.42
化合物テンプレート

バリシチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻、低分子量の分子標的治療である。JAKは細胞内の情報伝達を担う酵素で、免疫に関与している。JAKを選択的に阻することで過剰な免疫反応・炎症反応を抑制する。

アメリカ合衆国の製企業インサイト(Incyte Corporation)およびイーラリリー(Eli Lilly and Company)によって開発が進められ、日本では2017年7月、オルミエント®錠の製造販売が承認された。ジェネリック医薬品はない。

効能・効果

日本イーラリリー株式会社が製造販売しているオルミエント®錠の医薬品添付文書第8版(2024年3月訂)より、適応症は以下のとおり。

  • 既存治療で効果不十分な関節リウマ(関節の構造的損傷の防止を含む)
  • 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎
  • 既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎(全身のものを除く)
  • SARS-CoV-2による酸素吸入を要する患者に限る)
  • 脱毛部位が広範囲で難治性の円形脱毛症

用法・用量

関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症の治療では、1回4mgを1日1回経口投与する高尿酸血症痛風の治療プロベネシド用している患者や中等度以上の腎機障害のある患者など、患者の状態によっては1日1回2mgに減量する

2歳以上の小児のアトピー性皮膚炎、若年性特発性関節炎の治療では、体重30kg以上であれば1回4mgを1日1回経口投与する(1日1回2mgに減量可)。体重30kg未満であれば1回2mgを1日1回経口投与する(1日1回1mgに減量可)。

SARS-CoV-2による炎の治療では、レムデシビルとの併用で1回4mgを1日1回経口投与する(総投与期間は14日間まで)。ちなみに、本邦で承認されたSARS-CoV-2感染症治療は、レムデシビルベクルリー®)とデキサメタゾンデカドロン®など)に続いてバリシチニブが第3号となった。

作用機序

関節リウマチでは、関節における慢性的な炎症によって腫れ・痛みを伴う軟の破壊が起こり、関節としての機は損なわれていく。また、アトピー性皮膚炎では、皮膚における慢性的な炎症によってかゆみ・痛みを呈し、QOL生活の質)が低下する。SARS-CoV-2感染症COVID-19)における炎では、サイトカインストームと呼ばれる過剰な炎症反応によって発熱や多臓器不全をきたすことがある。

ヌスキナーゼ(JAK)は、炎症応答におけるサイトカインシグナル伝達に関与している。タンパク質Tyr残基をリン化するチロシンキナーゼの一種で、受容体の細胞ドメインリン化してシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)をリン化する。リン化されたSTATは標的遺伝子の転写を促進させ、免疫細胞の分化・増殖を促す(JAK-STATシグナル伝達経路)。バリシチニブは、JAKのアイソザイムのうちJAK1およびJAK2を選択的に阻してJAK-STAT経路のシグナル伝達を抑制するため、慢性の炎症や過剰な炎症による症状を緩和する。

禁忌・副作用

バリシチニブは免疫や造血機に関与するJAK-STAT経路を抑制するため、感染症の症状悪化をきたすおそれがある。したがって、活動性結核敗血症の患者、リンパ球数やヘモグロビン値の低い患者への投与は禁忌である。動物実験で催奇形性が報告されているため、妊婦または妊娠の可性のある女性への投与も禁忌。透析治療を受けている患者や末期腎不全の患者への投与も禁忌だが、腎機障害の程度によっては減量投与や隔日投与を行う場合がある。

頻度は低いが重大な副作用として、重篤な感染症、消化管穿孔、リンパ球やヘモグロビンの減少、肝機障害、間質性炎、静脈血栓塞栓症がある。頻度の較的高い副作用としては、上気感染による炎症(炎、咽頭・喉頭炎、炎など)、帯状疱疹、単純ヘルペス、悪心(吐き気)、頭痛、腹痛LDLコレステロール値の上昇などが報告されている。

同種同効薬

ヌスキナーゼ阻は、バリシチニブ以外にも数多く開発されている。トファシチニブ(ゼルヤンツ®)、ペフィシチニブ(スマイラ®)、ウパダシチニブ(リンヴォック®)、フィルゴチニブ(ジセレカ®)はバリシチニブ同様に関節リウマチの治療に用いられるほか、トファシチニブは潰瘍性大腸炎にも適応がある。デルゴシチニブ(コレクチム®)は経口ではなく外用の軟膏剤として、アトピー性皮膚炎の治療に適応。ルキソリチニブ(ジャカビ®)は化学構造中にピロロピリミジン環、ピラゾール環、シアノ基をもち、バリシチニブと構造がよく似ているが、髄線維症や真性多血症の治療に用いられるという違いがある。オクラシチニブ(アポキル®)は、ヒトではなくイヌアトピー性皮膚炎の治療に使用される。

SARS-CoV-2による炎の治療として、2022年1月トシリズマブ(アクテムラ®)が承認された。トシリズマブは、免疫系に関与するインターロイキン-6(IL-6)の可溶性および膜結合性の受容体に結合することで過剰な炎症応答を抑制する。

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