ファイヤーフォーメーションとは、主に野球における、守備を投げ捨てて攻撃力に全振りした(あるいは現有戦力でオーダーを組んだらそうなってしまった)布陣のことである。
概要
投手がいくら好投しても、守備がお粗末すぎてエラー、あるいはエラーに記録されないような安打を許すなどして、結果的に炎上してしまうことからファイヤーフォーメーションと俗に呼ばれる。読売ジャイアンツ(特にFAで4番を取りまくってた頃)、阪神タイガースなどでも見られたが、後述するように暗黒時代の横浜ベイスターズ(現・横浜DeNAベイスターズ)のファイヤーっぷりは悪い方で名高く、「ベイス☆ボール」の象徴とも言える。
2003年5月28日 横浜ベイスターズ対阪神タイガース11回戦
ネットでよく取り上げられる例である。まさにファイヤーフォーメーションの鑑と言えよう。
【投】川村丈夫
【捕】中村武志
【一】スティーブン・コックス
【二】村田修一
【三】古木克明
【遊】内川聖一
【左】鈴木尚典
【中】金城龍彦
【右】タイロン・ウッズ
「金城過労死シフト」。コックスとの併用の為、ファーストが本職のウッズをライトに回し、一方レフトは致命的な弱肩でおなじみの鈴木尚。唯一まともな守備力を持つセンターの金城の胃が心配である。なおこのコックスは現役メジャーリーガーの看板を引っ提げて入団した選手だが、怪我に次ぐ怪我でたったの15試合出場で退団することになる。
内野は更に目を覆いたくなる状態で、イップスを抱える内川(後に外野に転向して克服)と、サードが本職の村田が編成の都合でセカンドに置かれて二遊間を組み、そのサードはこの年の7月に伝説の「古木あーっと!」を起こす古木克明という有様である。
もはや炎上は目に見えているが打撃力は相当のものだったのか、相手の阪神が悪かったのか、この試合は9-10で阪神勝利という馬鹿試合気味な結果に終わった。
2010年8月7日 横浜ベイスターズ対ヤクルトスワローズ15回戦
時は流れ、95敗を喫したこのシーズンではこんなパターンもあった。
【投】加賀繁
【捕】武山真吾
【一】ブレット・ハーパー
【二】ホセ・カスティーヨ
【三】村田修一
【遊】石川雄洋
【左】ターメル・スレッジ
【中】吉村裕基
【右】内川聖一
同じようなオーダーでセンターが下園辰哉の試合もあった(この試合も途中から下園に交代している)。どちらにしても外野守備は守備力に不安が残るメンバーである。ファーストはシーズン途中に補強したハーパーで、打撃では豪快なホームランを量産していたが、明らかな鈍足体型をしており守備にも不安を抱えていた。そしてなんJなどで後に「石川内野手」と揶揄されることになる守備難の石川と、強肩は頼りになるがエラーを頻発するカスティーヨという二遊間。最後に守備やリードを解説者から酷評されることに定評のある武山という布陣である。ファンからも村田以外は全部穴と言われるほどの守備力であった(守備力に定評のある藤田一也がセカンドやショートとして先発することもあったが、打撃が課題でレギュラー定着には至らなかった)。
結果は7-10でヤクルト勝利と案の定炎上した。こんな馬鹿試合があったと思ったら一転してムエンゴに悩まされる羽目になった加賀はこのシーズンを3勝12敗で終えることになる。
おまけ…その後のベイスターズの守備事情(※2022年時点)
2011年は森本稀哲がFAで加入して金城もスタメンに復帰。また2010年ドラフトで荒波翔、2011年ドラフトで桑原将志を獲得。共に俊足の外野手で、後に彼らが金城の後釜としてセンターのレギュラーとなり、外野の守備はだいぶ改善されていった(現役晩年のアレックス・ラミレスがレフトを守っていた頃はファイヤー化したが)。その後レフトに筒香嘉智、ライトに梶谷隆幸がそれぞれコンバートされて安定を見た。筒香・梶谷の移籍後も佐野恵太ら若手が台頭し、かつてのファイヤーぶりはほとんど見られなくなった。
一方、二遊間は超長年の課題となった。特に2008年オフに「1番ショート」としてかつての日本一に貢献した功労者・石井琢朗に引退勧告を出して退団させてしまった後、その穴を埋められなかったのが極めて大きい。石川雄洋は地元・横浜高校の出身ともあって球団から後継者として期待されていたのか、結果が出なくても主に1番ショートで辛抱強く使われ(聖域)、俊足で盗塁を多数決めたが失敗も多く、足の速さに対して守備範囲が狭かったり、肩の弱さも目立って、最終的にはセカンドにコンバートされた。2012年からは代わって打撃力の高い梶谷隆幸が1番ショートになるが、石川以上に目も当てられない守備を連発してなんJ民にネタを提供しまくった為(石川梶谷の二遊間は多くのベイス☆ボールを生んだ。梶谷隆幸の消失とか)、2014年に強肩を活かせるライトにコンバートされた。数少ない守備力の持ち主だった藤田一也は、徐々に打撃の芽が出始めて期待が集まったが、2012年に楽天の内村賢介とトレードされる。その内村は打撃力不足で専ら代走要員か守備固めに留まった(一方藤田は楽天でレギュラーになる)。ドラフトでは2008年に山崎憲晴、2012年に白崎浩之、2014年に倉本寿彦、2015年に柴田竜拓と頻繁に内野手を獲得しているが、ショートのレギュラーに定着したのは倉本くらいで、しかもこの人もまた守備にやたらと難を抱え度々ファイヤー化し、やっぱりなんJなどで散々ネタにされた。2017年オフに守備の名手である前田大和をFAで獲得するまでの約10年、まともなショートがいなかったと言っていいだろう。2022年現在は、牧秀悟(2020年ドラフト2位)がセカンド、森敬斗(2019年ドラフト1位)がショート(大和と併用)という若い二遊間が組まれ、苦節十数年、ようやく安心して見ていられるような形になった。
サードは主に村田修一→筒香嘉智(中村紀洋)→宮崎敏郎と移り、ファーストは2015年から加入したホセ・ロペスが攻守で長らく活躍したので、特に問題は起こらなかった。
捕手は相川亮二が2008年オフにFAで出ていったが、その年のシーズン中に二番手捕手の鶴岡一成をトレードに出してしまっていたため、一時期一軍経験がほとんどない選手しか残っていないという完全な崩壊状態と化した(その為、守備に不安のある武山がレギュラーになっていた)。その後は髙城俊人、黒羽根利規、戸柱恭孝、嶺井博希、伊藤光といった選手が加入してマスクをかぶり、かつての大惨事と比べれば安定した。
関連項目
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