ポジトロニウム(positronium)とは、陽電子(positron)と電子(electron)が結合した、原子のような分子のようなロマンあふれるナニカである。
概要
冒頭で「ナニカ」とぼかしているのは、
「では、『分子』と呼びますか?」
「そもそも『分子』とは、『原子』が結合したものではないのか?」
……と、明確に分類しようとすると、それだけで論争が起こりそうだからである。文献では「束縛状態」「粒子多体系」など、各々の筆者による多種多様な表現が見受けられる。
省略する際は「Ps」と原子のように表記され、原子核を持たないことから「原子番号0番目の原子」と呼ばれることがある。また、負電荷を持つ粒子である電子と正電荷を持つ反粒子である陽電子から、陰陽道の陰と陽の関係性を見出して「太極」「☯」と呼ぶ研究者もいる。
陽電子とポジトロニウムについて包括的に解説している書籍「Principles and Applications of Positron & Positronium Chemistry」(doi.org/10.1142/5086)の表紙には、太極図(☯)と「Ps」が「H」の上に配置された周期表が描かれている。
対消滅によるポジトロニウムの生成
「陽電子は電子の反粒子であり、電子と出会うと対消滅を起こして光(という名のガンマ線)となって消える」ということは、ご存じの方もいるだろうが、実はこの対消滅の過程でポジトロニウムが生成している。
……のだが、生成したポジトロニウムは長生きしても142ナノ秒(0.000000142秒)の寿命(この値は真空中の寿命なので、実際はもっと短い)で結局は対消滅してしまうので、専門家でもない限りは取り立てて説明する意味があまりないため、大抵は省かれる。儚いものである。
関連項目
- 原子
- 電子
- 陽電子
- ポジトロン断層法(PET)
- PATFIT……実在する陽電子寿命スペクトル解析プログラム。
- Tao-Eldrup(タオ・エルドラップ)の式……ポジトロニウムの寿命から物質中のミクロな穴のサイズを求める半経験式。
- アモルファス(非晶質)
- 捕捉電子(trapped electron)……非晶質有機固体中に存在する、固体分子と結合せずに可視光程度のエネルギーで束縛されている電子。ポジトロニウム生成に影響する。
- 捕捉サイト(trapping site)……非晶質有機固体中に存在する、ポテンシャルエネルギーの低い空間。
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