リチャード・ドーキンス(Clinton Richard Dawkins、1941-)は、英国の行動生物学者・進化生物学者。「利己的な遺伝子」などダーウィニズム進化論の立場からの一般向け科学書の著作でも知られる。
概要
1941年、ケニア・ナイロビ生まれ。オックスフォード大学卒業後、カリフォルニア大バークレー校、オックスフォード大で教鞭を執る。
大学での研究教育の傍ら「利己的な遺伝子」「ブラインド・ウォッチメイカー」「虹の解体」などダーウィニズム・科学的合理主義の立場からの一般向け著作、「神は妄想である」などの宗教批判・無神論支持の著作を多くものしており、現在存命中の科学者としては世界的な知名度の高い一人である。
利己的な遺伝子(利己的遺伝子論)
端的に言えば生物の個体は「遺伝子の乗り物(運び手)」に過ぎず、進化の基本的単位は「遺伝子」であるという考え方であり、ドーキンスの業績の中でも主要と目されるものである。
この仮説により、従来は群淘汰によるものと説明されてきた動物の利他的行動が遺伝子の視点からすると利己的で合理的であると説明することが可能になり、進化生物学に新たな展望がもたらされることになった。
利己的遺伝子論(進化における遺伝子中心視点)はドーキンス単独の業績ではないが、かれの著作「利己的な遺伝子」によって広く人口に膾炙したため、現在でもドーキンスは利己的遺伝子論の主要な論者と見なされている。
しばしば誤解されるが、ここでいう「利己的」とは「自己の繁殖(複製)と生存の確率を高める行動」という意味であって、物質としての遺伝子が意志を持って振る舞うという意味ではないし、何らかの倫理的な価値判断の意味を持つ用語でもない。また利己的遺伝子論はかつての優生学に見られるような遺伝子決定論・遺伝子還元主義とも異なるものであることに注意。
ミーム
知識や情報が、複製と変異を繰り返し、淘汰されながら適応と放散を遂げていく様子を遺伝子になぞらえた用語である。日本語では「知伝子」などとも訳されるが、そのまんま「ミーム」としての方が通りがよいだろう。
「利己的な遺伝子」において「ミーム(meme)」という用語を提唱したのはドーキンスである。彼以前にもこうしたアナロジーを用いていた例が存在したことが指摘されているが、現在ではこの呼び名が最も普及している(「ミーム」という用語の普及と発展自体がミーム理論の一種のケーススタディとも言える)。
名付け親であるドーキンス自身は科学的検討の対象としてのミーム概念にはその後深く立ち入っておらず、ミーム理論の拡張は他の研究者によって引き継がれている。
無神論・宗教批判
ドーキンスは無神論者であることを公言しており、宗教、特にユダヤ、キリスト、イスラムの一神教的世界宗教に対して批判的な立場にある。近年ではカトリック教会による児童虐待とその組織的隠蔽が問題になった際、教会の責任追及の急先鋒に立ったことが記憶に新しい。
ドーキンスの宗教批判・無神論支援は、公教育に聖書的創造論あるいはその代替物としての知的設計(インテリジェントデザイン)説が持ち込まれることへの懸念、一神教の影響が強い地域において無神論者が社会的に不利な地位に置かれている状況の改善、判断力のない子供に親(家庭の、地域の)の宗教を自動的に当てはめようとすることへの批判など、多岐にわたっている(彼に言わせれば「キリスト教徒の子供」「イスラム教徒の子供」という表現は、「マルクス主義者の子供」「ケインズ主義者の子供」と同様にばかげたものである)。
これらの主張は「神は妄想である」という著作(およびそのタイトル)におおむねまとめられており、ドーキンス自身この著作がかれの宗教批判の「たぶん頂点」であると述べている。
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