助け人走るとは、朝日放送(現・ABC)制作で1973年10月20日~1974年6月22日までTBS系列で放送された、時代劇・必殺シリーズの第3作目である。全36話。
概要
オープニングナレーション
どこかで誰かが泣いている
誰が助けてくれようか
この世は人情紙風船
耳を澄ませた奴は誰?
鳴き声目指して走る影
この世は闇の助け人
表と裏の助け人
妹と二人暮らしの浪人・中山文十郎、元武士で妻と離縁した辻平内の二名は、普段は口入屋「助け人」の棟梁・清兵衛の紹介でどぶさらいや犬の世話など、大の男がやる仕事としてはうだつの上がらない人助け仕事ばかりやっていた。
だがそれは表向きのことであり、裏では清兵衛を元締とし、依頼人がとても表沙汰にできないような事を引き受け、その「人助け」の障害である邪魔(悪党)を始末する「闇の助け人」稼業をやっていたのであった。
ソフトからハードへ
前作『必殺仕置人』放映中に起きた「必殺仕置人殺人事件」で必殺シリーズは世間やマスコミから批判を受け、シリーズ終了の危機に陥っていた。容疑者の発言でシリーズ終了だけは免れたものの、前作の放送延長は白紙となった。
そんな折に、佐賀潜の小説『清兵衛流極意』を題材に制作、放送されたのが本作である。
前作までの様な「許せぬ悪」に暗殺や制裁を加えるのが主眼のハード路線ではなく、「人助け」を重要視した人情・ソフト路線であり、人殺しも行うものの「人助けの過程で、その障害となる・あるいは依頼人を苦しめる元凶である悪党を始末する」あくまで手段としての「殺し」というのが当初のコンセプトであった。そのため、番組前半は作風も登場人物も皆、明朗でコミカルな描写が多かった。
しかし第25話以降は作風が一転し、棟梁不在かつ奉行所の目が光る中で密かに依頼を受け、被害者の恨みを晴らすという前作に近い作風となり、明るかった各人も笑うことが少なくなり暗くなっていった。
そして迎えた最終回は……。
登場人物
助け人+関係者
- 中山文十郎演:田村高廣
- 妹しのと二人だけで長屋に住んでいる酒好きの浪人で、自分のレベルを相手に合わせる技量を持ち合わせる剣術の達人。気さくで明るい男でもある。しのの幸せを一番に願っており、利吉と恋仲であると知っていても、反対ばかりしている。しかし本人はヤキモチ焼きの芸者お吉と相思相愛の仲である。
「裏」では第24話までは兜割りや鉄心の太刀を使って悪人を排除していたが、第25話以降は兜割りのみ(一部鉄の棍棒)を使用することになる。
第12話では、助け人の「裏」を探る中村主水を消すべく対決するが、引き分けて足に怪我もした(結果的には仕事は失敗)。しかしその負傷さえ余裕で語っていたことから、主水とほぼ互角の腕だと思われる。
当初は「裏」の仕事はしのには黙っていたが、第24話でついに告白した。しかしそれ以降は、明るかった性格も暗く用心深いものに変貌していった。
最終回で助け人が解散した後は、お吉を伴って旅に出た。
- 辻平内演:中谷一郎
- かつては武士だったが、宮仕えが嫌になって刀を捨て、頭を丸めた男。そのため離縁され、毎月八の日には妻・綾に生活費を支払っている。
常にキセルでたばこを吸っており、「裏」の仕事もそのキセルの吸い口のカバーを外して、標的の首筋や脳天に突き刺して始末している。しかしあまりにも目立った殺し方であるためか、第12話「同心大疑惑」ではその手口が原因で北町奉行所同心の中村主水に目を付けられてしまうという失態も犯している。この事件は棟梁の清兵衛が主水を懐柔して事なきを得たが、それ以後も主水には頭が上がらない様子であった。
なお、第25話以降は助け人の裏稼業が露見したという理由で、辻家とは一方的に縁を切らされてしまった。
最終回で助け人が解散した後は、どこかへ旅立っていった。
- 島帰りの龍演:宮内洋
- 第20話より登場する、一匹狼を気取る裏専門の助け人。
同話では、不在の清兵衛の代わりに応対した文十郎と平内に名前だけ告げて去っていったが、終盤、悪人に顔を知られた二人を助け(てや)るという名目で再び出会い、悪人の始末を手伝った。しかし続く第21話では、実は別の人物の依頼を受けて清兵衛を殺しにやってきた事が判明し、帰ってきていた清兵衛と対峙。しかし清兵衛を殺せたとしても、清兵衛のノミで自分も相討ちにされると悟り、さらに清兵衛の人柄・実力を知って仲間入りする。
「裏」専門であるため、普段は何をやっているのかは謎(賭場に出入りしている程度の描写はある)。「裏」の仕事では、ブレーンバスターやジャイアントスイングといったプロレス技で相手の首をへし折る技を使っている。
最初は人付き合いの悪かった龍も、徐々に仲間と打ち解けるようになっていったが、最終回ではそんな仲間を守るために犠牲となり、捕り方に何度か斬られた後、捕り方の一人を抱えたまま川に沈んで消息不明となった。
- 油紙の利吉演:津坂匡章(現・秋野太作)
- 助け人の番頭をしている、どこか頼りなさそうな性格の軽い男。文十郎の妹しのと恋仲ではあるが、文十郎になかなか認めてもらえず苦労している。
第24話で清兵衛が江戸を離れてからは、棟梁代理となって依頼人からの仲介を引き受けるようになったが、第35話のようにニセの依頼に騙されて助け人が危機に陥るということもあった。 - 最終回で助け人が解散した後は、旅立つ文十郎にようやくしのとの仲を認めてもらい、そして二人で旅立った。
- 為吉演:住吉正博
- 利吉の弟分にあたる助け人の密偵で、利吉不在時には番頭代理をしているが、利吉以上に経費に口うるさい。
実は妻子ある男だが、自分が裏稼業をやっていることを知られたくないため、子供には父親であることを名乗らず、「為のおじちゃん」と呼ばれている。
第24話で自分が使った元文小判が元でかねてから助け人に目を付けていた役人に捕まり、拷問を受け続けたが、最後まで助け人の「裏」の事は喋らずに死んでいった。
必殺シリーズにおける殉職者第1号である。
- お吉演:野川由美子
- 登場したのは第1話からだが、第5話で文十郎達の「裏」を知ってしまい(お吉が文十郎の家に隠れているのを平内は気づかずに裏の仕事をペラペラ喋ってしまい事情を知った)、口封じに殺されるはずだったが、その時の気っぷの良さが買われて以後は助け人の仲間となった芸者。
文十郎とは恋仲だが、ヤキモチ焼きであり事あるごとに文十郎を閉口させている。
第12話では、主水の殺害に失敗して怪我をした文十郎に金を返せと迫る平内、為吉を相手に怒り、更には「ああ、可哀想な文さん」とイチャイチャして逆に二人を閉口させたこともあった。
最終回で助け人が解散した後は、一人旅立とうとする文十郎の後をついて行き、道連れとなった。
- 清兵衛演:山村聰
- 口入屋「助け人」の棟梁で、かつては「幻の清兵衛」と呼ばれた盗賊。
現在では現役を引退しており、「裏」の仕事は文十郎と平内(と龍)に任せているが、いざという時には自身もノミをふるって標的を始末することもある。
第24話で為吉が死んだのは、自分が渡した天文小判が原因であると贖罪にかられ、為吉の菩提を弔うために江戸を離れるが、第33話で久しぶりに江戸に戻った。
そして最終回で大奥の中﨟を脱出させることには成功したが、それと引き替えに龍を失い、助け人を解散した。
- 中山しの演:佐野厚子(現・佐野アツ子)
- 文十郎の妹で、茶店で働いている気立ての良い女性。
利吉とは恋仲ではあるが、なかなか兄に認めてもらえず苦労している。
兄の「裏」の事は全く知らなかったが、第24話「悲痛大解散」で文十郎からこれまで助け人の「裏」でやってきたことを知らされてからも兄のことを信じ続けている(助け人になったわけではない)。
最終回でようやく利吉とのことを認めてもらい、利吉と二人で旅立った。
- 辻綾演:小山明子
- 平内の別れた女房で、毎月八の日には平内から息子・新吾の養育費を兼ねた生活費を受け取っていたが、第25話では第24話で奉行所に詮議を受けたことが理由でその事を辻家の恥とし、完全に平内と縁を切ってしまった。
ゲスト
- 中村主水演:藤田まこと
- 第12話に登場した北町奉行所の同心で元仕置人(らしい)。
キセルを使った殺しで平内に目を付け、助け人の「裏」をかぎまわっていた。最初は清兵衛も賄賂を渡してやりすごしていたが、再び身辺をかぎまわっていたことで遂に殺害命令を出されて文十郎と対峙することになった。しかし、文十郎とは引き分け、その後、再び「裏」の仕事にひと口乗せろと言ったものの、清兵衛に上手く言いくるめられ、「裏」稼業としてではなく「表」稼業の八丁堀同心として、前作『必殺仕置人』の仕置のテーマをバックに盗賊一味と大立ち回りを演じて全員を捕縛し手柄を立てた。
為吉の調べで一刀無心流の達人・恐妻家・甘い物好きということまでは判明しているが、主水がかつて「仕置人」をやっていたということまではさすがに調べ上げられなかった。
エンディングナレーション
助け人の存在を証明する記録は何も現存していない
ただ、江戸の庶民たちは「義賊」という名で、
あるいは「世直し」という名で密かに語り続けた
伝えられる闇の助け人の総数、26人
主題歌
- 望郷の旅
- 作詞:安井かずみ 作曲:平尾昌晃 編曲:竜崎孝路 歌唱:森本太郎とスーパースター
- ※第1話と第2話以降では映像が違っており、第1話では背景がだんだん下に落ちていくシーンだが、第2話以降は一番下まで落ちた空のシーンが止まるようになった。
※この曲は、のちにTVアニメ『そらのおとしものf』第10話でエンディング曲として使用された。
サブタイトル
話数 | サブタイトル | 放送日 | 話数 | サブタイトル | 放送日 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 女郎大脱走 | 1973年10月20日 | 19 | 世情大不安 | 1974年2月23日 | |
2 | 仇討大殺陣 | 1973年10月27日 | 20 | 邪恋大迷惑 | 1974年3月2日 | |
3 | 表裏大泥棒 | 1973年11月3日 | 21 | 心中大悲憤 | 1974年3月9日 | |
4 | 島抜大海原 | 1973年11月10日 | 22 | 父子大相克 | 1974年3月16日 | |
5 | 御生命大切 | 1973年11月17日 | 23 | 裏切大慕情 | 1974年3月23日 | |
6 | 上意大悲恋 | 1973年11月24日 | 24 | 悲痛大解散 | 1974年3月30日 | |
7 | 営業大妨害 | 1973年12月1日 | 25 | 逃亡大商売 | 1974年4月6日 | |
8 | 女心大着服 | 1973年12月8日 | 26 | 凶運大見料 | 1974年4月13日 | |
9 | 悲願大勝負 | 1973年12月15日 | 27 | 江戸大暗黒 | 1974年4月20日 | |
10 | 水中大作戦 | 1973年12月22日 | 28 | 国替大決算 | 1974年4月27日 | |
11 | 落選大多数 | 1973年12月29日 | 29 | 地獄大搾取 | 1974年5月4日 | |
12 | 同心大疑惑 | 1974年1月5日 | 30 | 賃金大仕掛 | 1974年5月11日 | |
13 | 生活大破滅 | 1974年1月12日 | 31 | 狂乱大決着 | 1974年5月18日 | |
14 | 被害大妄想 | 1974年1月19日 | 32 | 偽善大往生 | 1974年5月25日 | |
15 | 悪党大修業 | 1974年1月26日 | 33 | 忠誠大心外 | 1974年6月1日 | |
16 | 掏摸大一家 | 1974年2月2日 | 34 | 必死大逃走 | 1974年6月8日 | |
17 | 探索大成功 | 1974年2月9日 | 35 | 危機大依頼 | 1974年6月15日 | |
18 | 放蕩大始末 | 1974年2月16日 | 36 | 解散大始末 | 1974年6月22日 |
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