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打順とは、野球、ソフトボール、クリケットにおいて選手が攻撃を行う順番のこと。
※主な現役選手は2020年の出場データに基づく。斜体の選手は最多だがスタメン30試合未満。
概要
出場する9人の選手の、打席に立つ順番を打順という。この打順の決定は野球の戦術の中でも特に重要視されるもので、各チームはそれぞれ持てる戦力の範囲で理想的な打順を模索することになる。
打順の決定によって構成される打者の並びを打線という。1998~2000年の横浜ベイスターズのマシンガン打線、2003年の福岡ダイエーホークスのダイハード打線のように、ほぼ固定されたメンバーで圧倒的な破壊力を発揮する打順は後々の語り草ともなる。一方、仰木彬監督時代のオリックス・ブルーウェーブや、2005年の千葉ロッテマリーンズのように、試合ごとに相手や選手の調子に合わせ打順を入れ替えて戦う戦術も存在する。
打“線”と称されるように、一般的に線のように繋がる打順が理想とされ、一昔前の巨人のように強打者を並べても繋がらない打順は「打“点”」と揶揄される。
特に日本では打順によってそれぞれ理想とされる選手像がある(後述)ため、一番から九番まであらゆる打順を任される選手というのは珍しい。長いプロ野球の歴史の中でも、「全打順で本塁打」を記録している選手は13人しかいない(現役では浅村栄斗、島内宏明、T-岡田、清田育宏が達成している)。
余談だが、現役時代ロッテ、オリックス、近鉄に所属した五十嵐章人は「投手・捕手を含めた全ポジションで一軍出場、かつ全打順で本塁打」という史上唯一の記録を持っている。
一番打者
トップバッター、リードオフマンとも呼ばれる、最初に打席に入る打者。出塁し、後ろの打者の安打によって得点することを最も求められる打順であり、俊足であることと盗塁技術のような走塁能力の高さ、長打よりも高打率を維持する打力と、出塁率を上げるための選球眼の良さ(四球を選ぶ能力)が求められる。
俊足であることが重要視されるため、守備でも俊足を求められる外野手(特に中堅手)、遊撃手、二塁手が一番打者に入ることが多い。一方、一塁手、三塁手、捕手がこの打順に入ることは珍しい。
一番は最も打順が多く回ってくることから、チーム内でも一番の強打者をあてるべきという意見もある。それに近い起用をした例としては、2007年の巨人が長距離打者の高橋由伸を一番に起用した例などがある。また2002~2003年の阪神の今岡誠のように、鈍足ながら高打率を買われて一番に起用される場合もある。
現役の主な一番打者(2020年の各球団スタメン最多出場選手/他、30試合以上スタメンの選手)
- ソフトバンク:周東佑京(二塁手、遊撃手)57試合
- ロッテ:荻野貴司(中堅手)43試合
- 西武:金子侑司(中堅手)39試合
- 楽天:小深田大翔(遊撃手)71試合
- 日本ハム:西川遥輝(中堅手)90試合
- オリックス:福田周平(二塁手)46試合
- 巨人:吉川尚輝(二塁手)46試合
- 阪神:近本光司(中堅手)106試合
- 中日:大島洋平(中堅手)94試合
- DeNA:梶谷隆幸(中堅手)106試合
- 広島:西川龍馬(中堅手)30試合
- ヤクルト:坂口智隆(一塁手・中堅手・右翼手)64試合
二番打者
一番打者と、クリーンナップと呼ばれる三番以降の中軸を繋ぐ打者。出塁した一番打者を進塁させるとともに、自らも出塁してチャンスを広げ、また一番打者に代わってチャンスメーカーとなることが求められる。
一番同様に俊足であること、出塁率の高さが重要であるが、それに加えてバントの上手さ、状況に応じたケースバッティングの巧みさが求められる。ファールで粘り球数を稼ぐなど、フォアザチームな選手が重宝される打順である。その性質上、外国人選手がこの打順に入ることは少ない。
一番打者同様、中堅手・遊撃手・二塁手などが入ることが多く、一塁手、三塁手、捕手が入ることは珍しい。
稀に、二番にバントをしない強打者を置く例もあり、日本ハムファイターズ時代の小笠原道大や、東京ヤクルトスワローズに所属していたアダム・リグスなどが有名。ただしそれを目論んで強打者を二番に置いたことで、二番の役割を意識しすぎてその打者が不振に陥ってしまう例もある(前田智徳など)。
一番と二番は役割が比較的似ているため、シーズン途中で一番と二番が逆になったり、一番打者の不振や離脱で二番が一番に繰り上がったりすることも多い。
現役の主な二番打者(2020年の各球団スタメン最多出場選手/他、30試合以上スタメンの選手)
- ソフトバンク:中村晃(一塁手)39試合
- ロッテ:レオネス・マーティン(右翼手)42試合/中村奨吾(二塁手)35試合
- 西武:源田壮亮(遊撃手)103試合
- 楽天:鈴木大地(三塁手・一塁手)91試合
- 日本ハム:平沼翔太(遊撃手)29試合
- オリックス:大城滉二(二塁手)29試合
- 巨人:松原聖弥(右翼手)59試合/坂本勇人(遊撃手)31試合
- 阪神:糸原健斗(二塁手)45試合
- 中日:京田陽太(遊撃手)48試合
- DeNA:ネフタリ・ソト(二塁手・一塁手)40試合
- 広島:菊池涼介(二塁手)60試合/田中広輔(遊撃手)38試合
- ヤクルト:山田哲人(二塁手)39試合/青木宣親(左翼手)30試合
三番打者
三番から五番は、塁上の走者を本塁に帰すことを求められることからクリーンナップと呼ばれる。その先陣を切る三番打者は、メジャーでは主にチーム内で最高の打者が置かれる打順である。
日本では四番を打つ長距離砲の前ということで、中軸として走者を帰すとともに、一番・二番が作ったチャンスを広げ、また一人でもチャンスメイクが可能な、巧打力・長打力・走力・勝負強さを高いレベルで兼ね備えたオールラウンダーの好打者がこの打順に入ることが多い。西武時代の松井稼頭央、中日時代の福留孝介などがその典型的な例。近年では山田哲人、柳田悠岐、浅村栄斗、丸佳浩などがオールラウンダー型三番打者の典型例と言える。
走力がそれほど高く無くとも、高打率と長打力、勝負強さを兼ね備えていれば優秀な三番打者といえる。
現役の主な三番打者(2020年の各球団スタメン最多出場選手/他、30試合以上スタメンの選手)
- ソフトバンク:柳田悠岐(中堅手)97試合
- ロッテ:レオネス・マーティン(右翼手)46試合
- 西武:森友哉(捕手)43試合/外崎修汰(二塁手)40試合
- 楽天:浅村栄斗(二塁手・指名打者)45試合
- 日本ハム:近藤健介(左翼手・指名打者)89試合
- オリックス:吉田正尚(左翼手・右翼手)67試合
- 巨人:坂本勇人(遊撃手)53試合/丸佳浩(中堅手)32試合
- 阪神:糸井嘉男(右翼手)52試合
- 中日:ソイロ・アルモンテ(左翼手)46試合/阿部寿樹(二塁手)34試合/福田永将(左翼手)30試合
- DeNA:ネフタリ・ソト(二塁手・一塁手)48試合/タイラー・オースティン(右翼手)39試合
- 広島:鈴木誠也(右翼手)34試合/長野久義(左翼手)32試合
四番打者
日本では一般的にチームで最強の長距離砲が置かれる打順であり、パワーヒッターの選手にとってこの打順に座ることは名誉なことと見なされる。助っ人外国人選手がこの打順に入ることも多いが、チーム内に同レベルのパワーを持つ日本人選手がいる場合は、外国人が三番か五番、日本人が四番となる場合も多い(過去で言えば阪神のランディ・バースと掛布雅之、近鉄のタフィ・ローズと中村紀洋など)。走力は基本的に求められない。とにかく打力である。
一打で試合の趨勢を決める本塁打を放つことが求められるため、パワーヒッターの一塁手、三塁手のほか、セ・リーグでは左翼手、パ・リーグでは指名打者も多い。一方、捕手、二塁手、遊撃手、中堅手などで四番を打つ選手は珍しい。
一方、長距離砲不在のチーム事情などにより四番をあくまで「四番目の打者」と位置づけて長距離砲を置かないチームも存在する。ボビー・バレンタイン監督はロッテ監督時代、中距離打者のサブローを四番として起用していた(ロッテは伝統的に長距離砲不在がチームカラーのため、その後も今江敏晃など中距離打者が四番を務めることが多い)。2010年には日本ハムの小谷野栄一が四番として16本塁打ながら109打点を挙げて打点王に輝いている。
またプロでは大谷翔平クラスでない限りまずあり得ないが、高校野球ぐらいまでのレベルでは最も上手い選手が投手をやることが多いため、「四番投手」が非常によく見られる。
現役の主な四番打者(2020年の各球団スタメン最多出場選手/他、30試合以上スタメンの選手)
- ソフトバンク:ジュリスベル・グラシアル(左翼手)39試合
- ロッテ:安田尚憲(三塁手)87試合
- 西武:山川穂高(一塁手・指名打者)70試合
- 楽天:浅村栄斗(二塁手・指名打者)75試合/島内宏明(左翼手)31試合
- 日本ハム:中田翔(一塁手・指名打者)116試合
- オリックス:アダム・ジョーンズ(指名打者)53試合/吉田正尚(左翼手・右翼手)43試合
- 巨人:岡本和真(三塁手)118試合
- 阪神:大山悠輔(三塁手)65試合/ジェリー・サンズ(左翼手)42試合
- 中日:ダヤン・ビシエド(一塁手)109試合
- DeNA:佐野恵太(左翼手)105試合
- 広島:鈴木誠也(右翼手)82試合
- ヤクルト:村上宗隆(一塁手・三塁手)120試合
五番打者
一般的に五番打者までを上位打線と呼び、クリーンナップの殿を務める五番には、基本的には四番打者と同じく、長打で塁上の走者を一掃することが求められる。走力が求められないのも同様。
四番打者が塁上に残した走者の掃除や、四番打者に続いて猛攻を仕掛けることが期待されるため、長打力とともに勝負強い選手が望まれる。驚異的な勢いで打点を荒稼ぎした2005年の阪神の今岡誠などが典型的な例。
現役の主な五番打者(2020年の各球団スタメン最多出場選手/他、30試合以上スタメンの選手)
- ソフトバンク:栗原陵矢(右翼手、一塁手)47試合
- ロッテ:井上晴哉(一塁手)62試合
- 西武:外崎修汰(二塁手)34試合
- 楽天:島内宏明(左翼手)69試合
- 日本ハム:渡邉諒(二塁手)53試合/大田泰示(右翼手)42試合
- オリックス:T-岡田(左翼手・一塁手)38試合
- 巨人:丸佳浩(中堅手)73試合
- 阪神:ジャスティン・ボーア(一塁手)40試合/大山悠輔(三塁手)39試合
- 中日:高橋周平(三塁手)99試合
- DeNA:宮崎敏郎(三塁手)67試合/ホセ・ロペス(一塁手)36試合
- 広島:松山竜平(一塁手)69試合
- ヤクルト:西浦直亨(遊撃手・三塁手)36試合
六番打者
ここからは一般的に下位打線と呼ばれ、打力への期待値はやや下がる。とはいえクリーンナップの直後を打つ六番には、クリーンナップ級の打力を持つ選手が入ることが多い。また筑波大学の研究では、四番に次いでチャンスで打席が回る確率が高い打順といわれている。
クリーンナップとは違って、「不動の六番打者」というポジションの選手は現役ではあまり居ない(ソフトバンクの松田宣浩が比較的それに近いか)。どちらかといえば中距離打者タイプ(確実性が低い三番打者タイプ)の選手や、クリーンナップからあぶれた長距離打者が入ることが多い。長距離砲不足のチームでは、単打が多いが打率の高いアベレージヒッタータイプが入ることが多い。
現役の主な六番打者(2020年の各球団スタメン最多出場選手/他、30試合以上スタメンの選手)
- ソフトバンク:松田宣浩(三塁手)22試合
- ロッテ:中村奨吾(二塁手)35試合
- 西武:中村剛也(三塁手)40試合
- 楽天:ステフェン・ロメロ(指名打者・右翼手)53試合
- 日本ハム:渡邉諒(二塁手)40試合/大田泰示(右翼手)30試合
- オリックス:アデルリン・ロドリゲス(一塁手)26試合
- 巨人:中島宏之(一塁手)56試合
- 阪神:ジャスティン・ボーア(一塁手)52試合
- 中日:阿部寿樹(二塁手)56試合
- DeNA:宮崎敏郎(三塁手)28試合
- 広島:會澤翼(捕手)38試合
- ヤクルト:アルシデス・エスコバー(遊撃手・三塁手)33試合
七番打者
八番と九番はセ・リーグでは一般的に捕手と投手の打順であるため、それ以外の野手で最も打力の無い選手が入る打順ということになる。パ・リーグでも九番には「裏の一番打者」としての役割が期待される関係から、やはり七番打者が一番地味である。
強いて言えば打撃の得意な捕手が入ることが比較的多いが、ほとんどのチームでは実績のない選手のスタメン抜擢や、不調の主力の打順降格など、様々な理由でいろいろな選手が入れ替わり立ち替わり打つ打順である。
松坂大輔は西武時代、日本シリーズで投手ながら七番を打ったことがある(2002年日本シリーズ第1戦)。
現役の主な七番打者(2020年の各球団スタメン最多出場選手/他、30試合以上スタメンの選手)
- ソフトバンク:松田宣浩(三塁手)46試合
- ロッテ:井上晴哉(一塁手)35試合
- 西武:コーリー・スパンジェンバーグ(左翼手・三塁手)27試合
- 楽天:銀次(一塁手)34試合
- 日本ハム:清宮幸太郎(一塁手)29試合
- オリックス:若月健矢(捕手)35試合
- 巨人:大城卓三(捕手)34試合
- 阪神:梅野隆太郎(捕手)40試合/木浪聖也(遊撃手)35試合
- 中日:京田陽太(遊撃手)57試合
- DeNA:戸柱恭孝(捕手)25試合
- 広島:堂林翔太(三塁手)44試合
- ヤクルト:アルシデス・エスコバー(遊撃手・三塁手)39試合
八番打者
かつては最も打力のない選手が置かれた打順であり、現在でもそのイメージはあまり変わらない。少年野球などでは最も下手な選手が八番・右翼、いわゆる「ライパチ」に置かれる。プロでもセでは九番に投手、パでは九番に一番打者への繋ぎとして俊足の選手を置くことが多いので、基本的にどちらにおいても捕手が入ることが大半。
ボビー・バレンタイン監督はロッテ監督時代、八番を第二のクリーンナップ的に位置づけ、パワーヒッターの李承燁を八番に置いていたことがある(俗に言うダブルチャンス打線。ただ有効性は疑問視される)。また固定の九番打者がいるパ・リーグのチームは交流戦で指名打者のない場合、八番に投手を入れる場合が稀にある。セ・リーグでは、横浜DeNAベイスターズのアレックス・ラミレス監督が2017年から「八番・投手」を好んで使っている。
セ・リーグでは次が投手ということもあり、八番打者が敬遠で歩かされることが結構ある。そのため、谷繁元信・中村武志・達川光男といった長年八番を務めた捕手が並み居る強打者に紛れて敬遠数の通算ランキング上位に入っている。
現役の主な八番打者(2020年の各球団スタメン最多出場選手/他、30試合以上スタメンの選手)
- ソフトバンク:甲斐拓也(捕手)56試合
- ロッテ:田村龍弘(捕手)53試合/藤岡裕大(遊撃手)30試合
- 西武:木村文紀(右翼手)30試合
- 楽天:太田光(捕手)50試合
- 日本ハム:宇佐見真吾(捕手)37試合
- オリックス:安達了一(遊撃手)14試合
- 巨人:炭谷銀仁朗(捕手)33試合
- 阪神:木浪聖也(遊撃手)36試合/小幡竜平(遊撃手・二塁手)34試合
- 中日:木下拓哉(捕手)65試合
- DeNA:大和(遊撃手)16試合
- 広島:田中広輔(遊撃手)61試合
- ヤクルト:西田明央(捕手)39試合
九番打者
最も打席の回る機会が少ないため、指名打者のないセ・リーグでは投手の入る打順である。セでは投手が九番以外を打つことは基本的にない(2017年以降のDeNAのように例外はある)。
一方パ・リーグでは指名打者があるため、最も打力のない選手を八番に置いて、九番には一番打者への繋ぎ、裏の一番打者として俊足の選手を置く場合がある(このため、九番打者が一番や二番に配置転換されたり、不調の一番・二番打者が九番に回されることも多い)。なので、守備型の遊撃手が入ることが比較的多い。捕手がよほど打撃に期待が持てない場合、あるいは守備に集中させたい場合は捕手が入る。
九番を定位置としていた代表的な選手には、元日本ハムの金子誠がいる。2009年の金子は打率3割と二桁本塁打を記録したが、打順はほぼ一貫して九番であった(120試合で九番スタメン)。
ちなみに九番がアウトになってチェンジになると、次の回の攻撃が一番からになるため、これを指して俗に「打順調整」と呼ぶ。
現役の主な九番打者(2020年の各球団スタメン最多出場選手/他、30試合以上スタメンの選手)
- ソフトバンク:甲斐拓也(捕手)・川瀬晃(遊撃手)29試合
- ロッテ:藤岡裕大(遊撃手)60試合
- 西武:金子侑司(中堅手)42試合
- 楽天:辰己涼介(中堅手)54試合
- 日本ハム:中島卓也(遊撃手)40試合
- オリックス:伏見寅威(捕手)23試合
- DeNA:戸柱恭孝(捕手)32試合
関連項目
- 野球
- プロ野球選手一覧
- マシンガン打線(横浜ベイスターズ)
- いてまえ打線(近鉄バファローズ)
- ダイハード打線(福岡ダイエーホークス)
- ビッグバン打線(日本ハムファイターズ)
- 史上最強打線(読売ジャイアンツ)
- ダイナマイト打線(阪神タイガース)
- No Limit打線(埼玉西武ライオンズ)
- 山賊打線(埼玉西武ライオンズ)
- 失策責任追及打線(広島東洋カープ)
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