痛電車とは、二次元キャラクターなどの痛い絵柄を車体にあしらった鉄道車両の俗称である。略称は痛電(後述)。
概要
「痛車」「痛自転車」のように、ラッピングフィルム技術などを用いて、鉄道車両の一部あるいは全面に、二次元サブカルキャラクター(あるいは【日本の鉄道車両ではあり得ない】「警察車両」の模倣をしたり、アイドルグループ構成員の実在人物を掲出)をあしらったラッピングトレイン(広告車両等)に対する俗称である。
後に「車」がつかない「痛電」とは意味合いが若干異なり、こちらは実物の鉄道車両を装飾した「(見た目が)痛々しい鉄道車両」を指す(文脈上「電車」でなく「ディーゼルカー」に施工したそれである、後述する「痛気動車」を含む)。
鉄道車両は個人所有が極めて困難であるため、通常広告媒体の一種や地域振興などの目的で、鉄道会社と広告主等の契約のもとに装飾され走っているという点が、「個人の趣味が高じて装飾される」という意味合いを含む本来の「痛車」の定義とは異なる。しかし、車体広告に携わる担当者などの趣味によって契約が交わされ、派手な広告車両が実現してしまうという可能性も否定しきれない。
余談であるが、個人所有の電気自動車を痛車仕様にした場合も、その構造上「痛電車」と呼ぶことが出来る(本来の意味の「痛電車」が出現するとすれば、こっちの方が可能性が高いかもしれない)。
目的と内容
これら列車の目的は、各種アニメなど作品の宣伝・周知および、いわゆる「聖地」への誘客が目的であるため、無期限に運行されるというわけではなく、たいていは期間限定運行である。
外装の空いたスペースにキャラクターを貼り付けたもの、ドア周りや戸袋などの比較的「常識的」な内容に収まるもの、案内放送が中の人(上述の「夏色キセキ」電車は、自社線内全駅の案内放送をスフィアでローテーションし、駅名のアクセントも地元の発音に合わせ完璧であった)であったり、果ては外装だけでなく車内の内装までフルラッピングしたり、車内のどこかに原作者の直筆サインが記入されるなど、手法は様々で「ラッピングバス」はもちろん、本物の「痛車」や、架空のものである「痛電」にも引けをとらない派手な車両・内容に仕立て上げられることもしばしばである。
逆に「ドラえもん」「アンパンマン」「ポケットモンスター(以下『ポケモン』)」など、広く一般に認知されている(と述べるか、「大きいお友達」よりも「純粋なお子様」が喜びそうな)アニメ・漫画をあしらった車両は一般的なラッピング車両と認識されることが多く、痛電車と呼ばれることは少ない。
なお、これら以外の「広告電車」をこのように呼ぶことは通常ないが、事業者側はこのような車両についても「痛電車」などとは言わず、あくまで「ラッピング車両(トレイン・電車など)」と呼んでおり、一般の広告車両と比べて特に取り扱いに差を設けていないのが通常である(PRする方向に違いは見られるが)。
運転実績
分類をするのは難しいが、大まかに3つのカテゴリに分けて説明する。
なお、ここでは前述の「痛電車(列車)」とはあまり認識されていないと考えられる一般的なアニメ・漫画をあしらったラッピング車両についても記すものとする。
(太字のみ現存。他の例、運行開始、終了などがあれば加筆ください)
沿線のアニメ関連施設・原作者出身地との縁
アニメ制作企業・記念施設が沿線に立地(いわゆる「聖地」が絡む事例は後述)していたり、原作者が沿線地域と縁のある場合。
- JR東日本・仙石線「マンガッタンライナー」
- 西武鉄道「銀河鉄道999」
- 小田急電鉄
- のと鉄道「永井豪キャラクター」
- JR四国「アンパンマン列車」
- JR西日本「忍者ハットリくん列車」「鬼太郎列車」および「(USJ)ラッピング列車」
- 千葉都市モノレール「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」
告知・タイアップ・広告出稿
運転路線と直接の関連は比較的薄く「映画の興行告知」「(単純な)タイアップ」「単なる広告出稿」などによるもの。
- JR北海道「ドラえもん海底列車」
- JR東日本
- 都電荒川線「ときめきメモリアル3」
- 東急東横線「仮面ライダー」「プリキュア」
- 江ノ島電鉄「メモリーズオフ」「ONE PIECE」
- 富士急行「EVANGELION TRAIN ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 公開記念電車」
地域振興・地域支援・行政協力
純粋な「地域振興(もしくは『聖地』を意識)」「行政協力」および「(子供たちへの)地域支援」の例。
海外の例
台湾鉄路管理局において、広告等とは関係ないと思われる「正真正銘の痛い車両」が目撃されている。食堂車をメインに据えた客車編成で「萌餐車」が現地語での愛称であると思われる。少なくとも2012年の下期に3両のデビューが確認されたが、2013年上半期は七堵駅で水アカが付くまで留置されており、現地で「荒廢?」とささやかれていた。このままお蔵入り、ボツになるかと思いきや、2013年夏に再度試運転がなされ、クルーズ列車に組み込まれる模様。
また、タイ王国・バンコク市のスワンナプーム国際空港と、中心部のパヤータイ駅を結ぶ高速鉄道「エアポート・レール・リンク」の「City Line」(各駅停車)には、2013年8月16日から同年9月15日までの期間限定で、札幌市への誘客目的で「初音ミク」「雪ミク」が側面全面にラッピング(窓部はメッシュ)された編成が登場した(出稿元は札幌市)。
その他
山手線内や大阪環状線内など、都市圏の「ど真ん中」を走る路線でこの手のデザインの電車が運転される割合は、意外に少ない。参考までに、過去にラッピング列車として山手線の車体に出稿されたものは、各種食品・サービス・観光地誘客・テレビドラマ・映画などであり、サブカル系の内容は「ポケモン」「マクロスF」や、いくつかのコンシューマゲームなどに限られている(大阪環状線―JRゆめ咲線は、上述したUSJ関連ラッピング電車が幅を利かせている)。また、割合としては少ないながらも、サブカル系の装飾がなされる車両は純粋な意味での「電車」に限らず「痛気動車」も存在する(上述した鹿島臨海鉄道・のと鉄道など)。
また「鉄道むすめ」関連のラッピングトレインを運行している函館市電〔企業局交通部〕、富山ライトレール)もPRとはいえ自社局企画によるものであるため、PR用と言うべきか正真正銘の痛電車と言うべきか議論が分かれそうなところではある。
なお、事業者ウェブページで対外的に細かな運用が公表される確率は、同様の媒体である「痛バス」よりはるかに高い(例:上述の「あの夏で待ってる」「ガルパン」列車、過去には、2012年夏の伊豆急行「夏色キセキ」ラッピング電車。特設ウェブページを設け、外装、運行期間と運転しない日、車内放送の区間など、詳細な告知を行った)。
余談であるが、これらの列車に乗務することを好まない、あるいは露骨に嫌がる乗務員は、やはり…と申すか、残念ながら少なくないようだ。この節を編集した者のコネクションから、複数事業者の現業乗務員に聴き取り調査を行ったところ、車体に描かれた内容自体に嫌悪感を抱いていたり、「撮り鉄」や「音鉄」属性を持つ、一部の心ない「自称鉄道ファン」が起こすトラブルなど危惧しているような割合は少ないようだ。多数を占めた所感を総合すると、単純明快「臨時列車でもないのに沿線や駅頭からファインダーを多数向けられて被写体となり、晒し者扱いのまま走るのが堪えられない」のだそうである。
奇しくも、乗務員の意識の面においてもそれが本物の「痛い列車」なのか「第三者間同士の契約による広告等が目的の列車」なのか、といった区別が窺える調査結果であることを物語っている。もしそれが本物の「痛電車」の定義にあてはまるものであったとすれば、乗務員自身もまた自覚を持って乗務しているはずであり、注目が集まることや被写体となること自体が気分の悪いものではないはずだからである。
痛電仕様のラッピング車両
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関連項目
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