オールブラッシュ(All Blush)とは、2012年生まれの日本の競走馬。黒鹿毛の牡馬。
迷種牡馬ウォーエンブレムの代表産駒の1頭で、変なところでも父に似てしまった馬。
主な勝ち鞍
2017年:川崎記念(JpnⅠ)
2018年:浦和記念(JpnⅡ)
2020年:報知オールスターカップ(南関東SⅢ)
概要
父*ウォーエンブレム、母*ブラッシングプリンセス、母父Crafty Prospectorという血統。
父は2002年のアメリカ二冠馬。日本の主流血統があまり入っていないことから主に*サンデーサイレンス系の牝馬につけるために社台グループに輸入されたのだが、とにかく牝馬のえり好みがあまりにも激しく、栗毛の小柄な牝馬でないと発情しなかったため種付けに苦労しまくったという逸話で有名。種付けさえできれば産駒の出来はよく、芝では秋華賞馬ブラックエンブレムや阪神JF馬ローブティサージュ、ダートではシビルウォーなどを送り出した。
母はアメリカで1戦0勝。オールブラッシュが13番仔というベテランママであり、お察しの通り栗毛である。まあウォーエンブレムの好みも途中から変わったらしいので、種牡馬生活晩年の種付けである彼女が父親好みだったから種付けできたのかどうかは不明だが。
母父クラフティプロスペクターはその名の通りMr. Prospector産駒で、父同様重賞未勝利ながら10戦7勝、GⅠ2着1回で底を見せず引退、種牡馬としてもそれなりに成功した。日本では何と言っても変態*アグネスデジタルの父として知られる。
*ウォーエンブレムの父Our EmblemもMr. Prospector産駒なので、Mr. Prospectorの3×3という濃いめのインブリード持ち。
姪(半姉ティックルピンクの産駒)にJBCレディスクラシックを勝ったアンジュデジールがいる。また、牝系は北米で多数の活躍馬を輩出している名牝系である。
2012年3月7日、社台系の白老ファームで誕生。オーナーはおなじみ一口馬主クラブの社台レースホースで、75万円×40口(=3000万円)で募集された。
馬名意味は「皆が赤面する。他馬が降参するような馬になるように」。
そこのけそこのけ似た者親子
2歳~4歳(2014年~2016年)
テスタマッタやコパノリッキーで知られる栗東の村山明厩舎に入厩し、2014年7月13日、中京・芝1600mの新馬戦で浜中俊を鞍上にデビューしたが、10番人気の低評価通りの11着。続く9月の阪神・芝1800mの未勝利戦からは小崎綾也に乗り替わったが14着に沈み、芝を諦めてダートに転向する。
しかしダート転向ですぐに才能開花したわけでもなく、未勝利戦は転向後2戦目の京都1400m戦で突破したが、1400mでは500万下で早くも壁にぶつかって7着、8着。そこで藤岡康太に乗り替わって距離を延長すると、京都1800mと小倉1700mで連続して3着。途中挫石で回避があったりしつつも、クリストフ・ルメールが騎乗した中京1800mの平場500万下にて、5馬身差の逃げ切り勝ちを収めて昇級5戦目で2勝目を挙げる。
これでレパードステークス(GⅢ)に登録、抽選を突破し蛯名正義を迎えて重賞初挑戦したが、出遅れて逃げられず、後方のまま見せ場なく9着。この後、鼻出血を発症してしまい休養に入り3歳を終える。
明けて4歳、半年の休養を経て復帰。鞍上をコロコロ変えながら自己条件の1000万下でダート1800mを走るも、3着、2着、4着、2着、2着となかなか勝ちきれず、和田竜二が騎乗した5月の京都の平場1000万下をなんとかハナ差逃げ切ってようやく勝ち抜けたが、すぐに降級となり1000万下に残留。降級初戦を和田で2着に敗れて夏休みに入る。
4ヶ月休み、10月の京都・ダート1800mの平場1000万下でルメールを迎えて復帰すると、ここを逃げ切って準OPに昇格。続いて11月の同条件・観月橋ステークス(1600万下)にルメールと向かい、ここでは逃げられなかったものの好位でレースを進め、逃げ粘るリーゼントロックを差し切って勝利。連勝で一気にオープン入りを果たした。
この後は12月のベテルギウスステークス(OP)に向かう予定だったのだが、熱発で回避。……この回避が、彼の運命を大きく変えることになる。
5歳~6歳(2017年~2018年)
明けて5歳、まずはオープン特別からGⅢへ……というファンや出資者の想定に対し、なんと陣営は強気に川崎記念(JpnⅠ)に登録。さすがに賞金が足りないのではと思われたが、補欠2番手からなんと2頭回避が出たことで出走できることになった。
当日は昨年のチャンピオンズカップ覇者サウンドトゥルーが1.6倍の断然人気。昨年重賞3勝の4歳馬ケイティブレイブが3.3倍の2番人気。オールブラッシュが回避したベテルギウスSを勝った同期のミツバが6.0倍の3番人気。オープン入りしたばかりのオールブラッシュは18.2倍の5番人気である。同じくオープン入りしたばかりの4歳馬コスモカナディアン(柴田大知)が60.3倍だったことを考えると、オッズの差は明らかにルメール人気で、有力馬たちにとってはノーマークと言っていい存在だった。
しかし好スタートからハナを切ったオールブラッシュは、ケイティブレイブが控えたこともあって後ろを離した単騎逃げに持ち込む。ホームストレッチでミツバが進出してきたが、ルメールが上手くペースをコントロールして4角で後ろを引きつけて息を入れ、直線で再加速して突き放す完璧な逃げを披露。後方から追い込んできたサウンドトゥルーに影も踏ませず、3馬身差で鮮やかに逃げ切ってみせた。
サウンドトゥルー鞍上・大野拓弥の「ノーマークの馬にやられてしまいました」という率直すぎるコメント通りのレースではあるかもしれないが、ルメールの絶妙なペース配分が光った見事な逃げであったと言うべきだろう。
しかしGⅠ級を勝ってしまうとその後はノーマークで楽に逃げさせては貰えなくなり、苦戦と模索の日々が続く。59kgを背負った名古屋大賞典(JpnⅢ)では控えたものの見せ場なく5着。帝王賞(JpnⅠ)では逃げたがクリソライトにがっちりマークされて4角で捕まり6着。大井開催のJBCクラシック(JpnⅠ)も逃げたものの直線で置いて行かれて6着。浦和記念(JpnⅠ)では1番人気に支持されたものの大外枠から中団に構えたが3着まで。年末の名古屋グランプリ(JpnⅡ)も中団のまま見せ場なく5着に終わる。
明けて6歳、連覇のかかる川崎記念はスクミで無念の回避となり、石橋脩を迎えてマーチステークス(GⅢ)から始動したが終始後方のまま11着撃沈。
続いて向かったのはマイルに距離短縮してかしわ記念(JpnⅠ)。ここ1年以上の凡走ぶりから、JRA勢最下位の28.7倍の6番人気に留まったが、田辺裕信を迎えて久しぶりの逃げを打つと、ゴールドドリームに差し切られたもののインカンテーションの追撃は振り切って2着に粘り込む。
やっぱり楽に逃げられれば強いのは確か……なのだが、オールブラッシュは決してスタートの速い馬ではないため、なかなか逃げさせてもらえない。帝王賞は2番手から4角で沈んで9着、マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnⅠ)は5着、ミルコ・デムーロがテン乗りしたJBCクラシックは10着撃沈。
どうしたものかなあという状況の中、田辺に戻って昨年に続いて向かった浦和記念。今回も他の馬のダッシュが良く中団からのレースになってしまったが、2週目の向こう正面で外に出すと一気に捲って進出し3コーナーで先頭に立ち、そのまま押し切って4馬身差で圧勝。これまでにないレースを見せて久々の重賞2勝目を挙げた。
7歳~8歳(2019年~2020年)
明けて7歳は2年ぶりの川崎記念で始動。今回もスタートは中団からになったが、ホームストレッチで外から進出して逃げるサルサディオーネに接近して2番手へ。3角でサルサディオーネが沈んで先頭に立ったが、ミツバとケイティブレイブとの直線の叩き合いとなり、ミツバに振り落とされて3着。
続くダイオライト記念(JpnⅡ)は田辺が押してハナを切って逃げたが、直線であっさりチュウワウィザードにかわされてまた3着。かしわ記念は出負けして中団からになり、捲りを仕掛けたもののマイルでは捲りきれず4着まで。
これ以降は好走も厳しくなり、帝王賞を9着、MCS南部杯を7着と敗れたところでJRAの登録を抹消。大井競馬場の藤田輝信厩舎に移籍したが、連覇を目指した浦和記念も8着に終わる。
明けて8歳、報知オールスターカップ(南関東SⅢ)から始動。さすがにもう厳しいだろうと8番人気という低評価だったが、後方からホームストレッチで一気に先頭に進出、そのまま後続を突き放す捲り逃げを披露してハナ差粘りきり久しぶりの勝利を挙げる。
しかしその後は大井記念で3着になったぐらいでまた凡走が続き、9歳となる2021年も現役続行の予定だったが高齢で疲れが抜けにくくなっていたこともあり、サラオク上場で譲渡のプランもあったが、結局2021年1月に地方の登録も抹消、現役引退となった。通算43戦8勝 [8-5-7-23]。
引退後
引退後は一度は社台ファームで乗馬になると報じられたが、貴重な*ウォーエンブレム産駒の牡馬GⅠ馬ということもあり、ウインバリアシオンを種牡馬として導入したことでも知られる青森県十和田市のスプリングファームで種牡馬入りすることになった。
というわけで2021年から種牡馬として供用されることになったオールブラッシュなのだが……父に似て種付けに積極的でなく、少しでも牝馬が動くと嫌がったり、やっぱり小柄な牝馬でないとなかなか乗り気になってくれなかったという。親子2代でロリコンとは業が深い……。
どうしたものかと牧場関係者が試行錯誤した結果、発情した牝馬の尿を嗅がせるという作戦でオールブラッシュを興奮させることに成功。これでスムーズに種付けができるようになった。ただしどんな牝馬の尿でもいいわけではなく、スノーフラワーという芦毛の牝馬の尿でないと興奮しないらしい。もうやだこの親子。そんな変なところまで親に似なくていいから……。
産駒は2024年からデビューする。種付け数は多くはないが、青森の馬産を支えるような活躍ができるだろうか。
血統表
*ウォーエンブレム 1999 青鹿毛 |
Our Emblem 1991 黒鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Personal Ensign | Private Account | ||
Grecian Banner | |||
Sweetest Lady 1990 鹿毛 |
Lord at War | General | |
Luna de Miel | |||
Sweetest Roman | The Pruner | ||
I Also | |||
*ブラッシングプリンセス 1996 栗毛 FNo.2-n |
Crafty Prospector 1979 栗毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Real Crafty Lady | In Reality | ||
Princess Roycraft | |||
Princess Laika 1980 栗毛 |
Blushing Groom | Red God | |
Runaway Bride | |||
Cool Mood | Northern Dancer | ||
Happy Mood |
クロス:Mr. Prospector 3×3(25.00%)
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