トゥクトゥク(ตุ๊กตุ๊ก)とは、特にタイ・ラオスで見られる旅客用のオート三輪の名称である。但し、プーケットのみ軽トラックベースとなる。
概要
タイにおけるタクシーの一種であるが、地域によっては乗り合いのタクシーの趣きもある。
名称の由来はエンジン音のタイ語によるオノマトペであるが、外国人を中心に東南アジア全般で見られるオート三輪(インドネシアにおける「バジャイ」やインドにおける「オートリクシャー」)を総称してトゥクトゥクと言う事もある。無論、その逆もある。また現地では輪タクを指すタイ語の「サムロー(สามล้อ)」という場合もある。
その源流はダイハツ・ミゼットまでさかのぼる。安価で使いやすいサイズと言う事で日本国内でも大変な人気を誇っていたのだが、海外へ輸出される車両も多く存在した。その中の一つであるタイ王国に輸出された際、既に当地を走っていた輪タクの「サムロー」と結びついて、トゥクトゥクが生まれたと思われる。その後も日本で郵便車や遊園地の園内バスとして使われていた車両が廃車となった後に輸出され、トゥクトゥクに改造されていった。主にバーハンドルで知られるDK型が多く見られるが、アユタヤなど一部地域では丸型ハンドルのMP型ベースとなっている事がある。
現在タイ国内で見られるトゥクトゥクはミゼットを真似てタイ国内で生産された車両で、エンジンなどは日本の軽トラのものを流用しているものと思われる。シルエットこそミゼットをなぞっているが、多くの地域で車体は大きめとなっており、また改修に次ぐ改修、交換に次ぐ交換を重ねていった結果、日本のミゼットとは似て非なるものになっていると言っても過言ではない。また、地方ではバイクベースとしてる物も存在する。なお、プーケットで見られるのは名称こそトゥクトゥクであるが、まんま軽トラックである。なお、これらのベース車や部品はほぼダイハツ製のものが使用されている。
DK型ベースのトゥクトゥク
バンコクをはじめ、多くの地方都市で見られるタイプである。一般的にはかつて荷台だった部分を客室として、そこにシートをおいている。屋根はビニール製となっており、ある程度の直射日光や雨はしのげるが、排気ガスを直接浴びたり、土砂降りの雨では脇から入ってくる事が多い。これ以外にもバンコク・チャオプラヤー川西側では向かい合わせの長椅子タイプも存在する。基本的に左側通行のため、車体の左側に乗降口があるが、チェンマイで見られる物は両方向に乗降口がある。
エンジンはミゼットからの慣習からかほぼダイハツ製である。かつては360ccハイゼットに採用されていた2気筒の2サイクルエンジンであったが、近年では660ccのものに換装されている。燃料は価格が安いLPGであるが、新型を中心にさらに安い天然ガスを使用している場合がある。部品もまたしかりでダイハツ製の部品を使用するケースが多く、ホイールのPCDも日本では1990年代末までダイハツで使用した特殊なサイズである110mmである。
バンコクには多種多様の塗装があるが、これはそれぞれ所属する組合の色である。
MP型ベースのトゥクトゥク
アユタヤやピッサヌローク、トランで見られる物は主にMP型をベースとしている。現地では「カエル顔」と言われる。形としては向かい合わせの長椅子であり、屋根は鉄製となっている。この為、乗り合いのタクシーの性格を併せ持っている。なお、定員の概念はないので明らかに10人以上は乗っているであろうトゥクトゥクが尻下がりになって走る姿があちこちで見られる。
エンジンはこちらも慣習からかほぼダイハツであるが、2サイクルは少数派で4サイクルが主流となっている。燃料もLPGが主流となっている。
原型のミゼットより大型化されているが、ドアがスーサイドドアではなく、軽トラの廃品利用となっていたり、角目になっていたり、ハイゼットジャンボ的なキャビン延長など、かなりイメージが異なる。
バイクベースのトゥクトゥク
地方の町村部で見られる形態で、ミゼットベースとは一線を画したものとなっている。その作りもミゼットと言うよりは輪タクのサムローに影響を受けたものが見られる。その形態はまちまちでミゼットベースのものよりも個体差が激しくなっている。
エンジンに乗用車の物を流用してフロントフォークや燃料タンクをバイクの物を流用した車両もあれば、ほぼ前半分はバイクの物を流用した車両、前はバイクで後ろは軽トラックの部品を利用した車両など、一つとして同じ車両がないと言う事もある。
ラオスのトゥクトゥク
ラオスにおいてはバイクベースも見られるが、DK型ベースの物が多い。しかし、その大きさはバンコクで見られるものより一回り大きく、軽のサイズを超えて小型トラックサイズとも言える。日本で言えばライトエーストラックぐらいの大きさに迫る。しかし、部品はダイハツの物が多く見受けられる。
座席は向かい合わせの長椅子であり、また割合広い地域をカバーしているのか乗り合いバスのような様相もある。
利用者側としてのメリット・デメリット
メリット
- 気軽にタイらしさを味わえる
- 臭いを放つ物や長尺物などを載せたまま営業ができる
地元民が利用する方法である。言うまでもなくドリアンの様な臭気の強いものはタクシーや電車を使用する事が出来ない。また、電気屋で冷蔵庫の様な物を運ぶ場合もまたしかりであり、こうした場合に利用に差し支えの出ないのもメリットである。 - 細い路地であってもスイスイ進める
網の目のような路地が多く、その幅もお世辞にも広いと言えない道が多いバンコクの場合、その小ささが生きるケースもある。
デメリット
- 不明瞭な運賃体系
トゥクトゥクの運賃はメーターではなく、あらかじめ運転手と交渉する昔ながらの交渉制であり、相場を知らない人はぼったくられることはしばしばある。日本円に直せば初乗りに満たない、もしくは少しオーバーする程度のものではあるが、同じ距離で比べた場合でも概してメータータクシーと比べても割高である。 - 不埒なドライバーの存在
中には目的地にはいかず、もしくは回り道をして怪しい土産屋へ立ち寄るようなドライバーもいる。これは連れて行く事で土産屋からのキックバックがある為である。 - 安全面の不安
三輪なので横転の危険性もある。また衝突されれば車から放り出される事もある。 - 天候面の不安
夕立の多いお国柄、雨が降れば横から雨を浴びることもしばしば。また晴れていれば日本以上に強烈な高温多湿を身をもって体験する事が出来る。快適な空調?何を言ってるんですか。 - 防犯面での不安
両サイドがら空きなので、スリに合う危険が高い。なお、メータータクシーは追いはぎに変化する、別の面の防犯面の不安がある。 - 長距離利用には不向き
その小ささから運転手も旅客も長距離利用は肉体的負担から出来ない。あくまで市街地を短距離で利用する用途に限られる。これで空港とかはバンコクではやってくれない。 - 身体的負担の大きさ
高温多湿の気候もさることながら、世界でも名の知れた渋滞の中を通るので排ガスをもろに浴びる。
現状
現在でもタイ各地でその姿を見る事が出来るが、バンコクにおいては交通の主流からは既に外れつつある。上記にあげたデメリットが影響し、メータータクシーにお株を奪われている。バンコクでは7500台弱が走っているが、4輪のメータータクシーが約3万台である事を考えるとその差は歴然である。
現在、バンコクでは新規でトゥクトゥクの登録は認められていないのでこれ以上台数が増える事はないと思われる。では、トゥクトゥクは時代遅れの代物として滅ぶのかと思えばそう言う訳でもなく、特に観光客からすればもっともタイらしい乗り物と言う事で一定の需要が存在する。バンコクの繁華街では欧米人の方が乗っている人間が多いという事態もある。ある程度こなれているドライバーの場合、ふっかけられたり、変なお店に連れて行かれそうになる事もあるので用心されたい。もっとも、ふっかけられると言っても日本の基準からすれば初乗りにも満たないものである。
また地元民もタクシーには積みきれない、もしくは積めない野菜やドリアン、冷蔵庫などの長尺物を運ぶ際に使ったり、こうした物の小口の輸送に使うなどの使用方法がある。
また地方都市でもメータータクシーは主流ではないので、地方都市ではまだまだ主役でいられると思われる。
日本で乗る場合
信じられない事かも知れないが、トゥクトゥクは日本で乗ったりする事が出来る。
日本では旧来から三輪自動車の区分(貨物は6ナンバー、乗用は7ナンバー)が存在していたが、昭和40年代以降に新車種は登場しておらず、また現行においては様々な観点より新たに三輪自動車を登場させる事は絶望的とされている。その為、トゥクトゥクでもMP型ベースの場合は登録は困難を極めると思われる。
但しDK型の場合、ドライバー側の両脇がオープンである事などから、「側車付き二輪」扱い、つまりトライクとしての登録が可能である。なので運転に関しては二輪免許ではなく、四輪免許が必要である。但し、税金などは二輪の物が適用されるので維持費は非常に安価である。
現在、いくつかの会社よりトゥクトゥクの輸入が行われている。
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