そしてここに、一本の電話を待っている一人の男 ニューヨーク市警察の刑事コジャック |
概要
刑事コジャックは、アメリカのCBSで制作・放送された刑事ドラマのシリーズである。
本国での放映時期は1973~1978年。日本では1975年から放映された。5年間の連続ドラマ放送終了後も7話のスペシャルドラマが制作され、パイロット版を含め1990年までに123話が制作された。刑事ドラマとしては「リアル系」に属し、刑事の活動や部署の雰囲気などはリアリズムを追及して作られている。その為、当時の刑事ドラマとしてはありがちだった銃撃シーンは極力抑制したものとなり、生身の刑事、そして犯罪者を描こうとした。
主人公のコジャック警部補を演じるテリー・サバラスの個性と相まって、全米で人気を博した。日本ではそれに加え、吹替えの森山周一郎による江戸っ子口調と渋い声がハマり、やはり人気ドラマとなった。
またハーヴィー・カイテルやハリス・ユーリンなど、後に様々な作品に出るバイプレイヤーも脇役として登場している。ちなみにこの二人は後の作品では悪役が目立つが、コジャックでも犯罪者の役であった。
物語
ニューヨーク市・マンハッタン。ビッグアップルの中核であるマンハッタン区を成す島。二つの河を隔ててブロンクス、クィーンズ、ブルックリン、スタテンアイランドの四区、そしてニュージャージー州に接している。ダウンタウンには金融屋が、ソーホーには芸術家の卵が、ブロードウェイには役者と観客、セントラルパークには憩いの場を求める市民、アップタウンには貧しい人々。そして彼らの中に紛れ込み、善良な市民を狙う人殺し、ポン引き、ヤクの売人、窃盗犯たち。「善良な市民を狙う」というのは偏った表現だろうか、悪党は互いにも狙い合っているのだから。
マンハッタンのミッドタウンから少し南に下ったところに、ニューヨーク市警察第13分署はある。その分署の一室では、絶え間なく電話やタイプライターがざわめき、時に男たちの怒声が鳴り響く。市警刑事局マンハッタン刑事管区第13刑事分隊。彼らがこの部屋の主だ。分隊室には色気も愛想も無い事務机が並び、壁の塗料は所々ハゲていて、決して居心地がいい部屋ではない。ここが13分隊に属する刑事達の家だ。
彼らは給料が増えるわけでもないのに、まるで生まれた時に刷り込まれた習性に従うかのように仕事をこなしている。刑事達の仕事は言葉で表せば簡単だ。ニューヨーク州の法令に違反した悪党を捕まえ、裁判所が連中を罰してくれるだけの証拠を集め、検事補が立件できるだけの環境を作り出すこと。だがこの自由の国で、人様の自由を奪って悪党として裁くのは簡単ではない。その為に、ある者はタイプライターを叩いて報告書を書き、ある者は引っ張ってきた被疑者に詰問し、ある者は電話の相手と悪党の捕まえ方について相談する、と言う具合で黙々と働く。ただひたすらに。
勿論、この部屋にいるだけでは仕事にならない。彼らはささやかな憩いの時間も惜しんで、出たり入ったり、入ったり出たり。街へと繰り出しては悪党を見つけ、悪党を見つけては連行して取調べをし、報告書を書き、証拠を探し、検事補と罪状や立件の見込みについて議論し、そしてまた電話にせきたてられて街へと出て行く。
分隊室の奥には、ドアと壁で隔てられたもう一つの部屋がある。中には一つの事務机があり、その上には電話に電気スタンド、書類を入れておくための小さい棚。壁際には資料を入れておく書棚が並ぶ。
事務机の前の椅子に男が座っている。恰幅のいい体に瀟洒なスーツを着た強面のハゲ頭。事件に係る資料に目を通しながら、コーヒーカップに手を伸ばす。彼はテオ・コジャック警部補、第13刑事分隊長。分隊を率いて、少しでも検事補さんが立件しやすいように刑事達を動かすのが彼の仕事だ。この部屋は分隊長室。分隊室が刑事達の家であるように、分隊長室は彼の家である。
「クロッカー!」
コジャックが声を張り上げると、言われて分隊長室へ入ってきたのはクロッカー巡査部長。コジャックを補佐し、刑事達を監督する彼の第一の部下である。少し額は後退しているが、若さと精悍さのある青年だ。いつも品のいいスーツとコートを着ていて、腰の後に収めたインナーホルスターに拳銃を仕込んでいる。
「はい、なんでしょう」
「3日前の殺人事件だが、現場近くで発見された銃の鑑定結果はどうなっている?」
「それならスタブロスが知っています」
「そうか、おい!スタブロス!」
またコジャックが声を張り上げると、今度はモジャモジャ頭に冴えない顔つき、ヨレたスーツの太った男が部屋へ入ってきた。彼はスタブロス刑事。植物を愛する気の優しい中年の男。出世とは縁が無くノロマなところもあるが、信頼すべき部下の一人だ。
「はい長さん」
「あの事件の銃の鑑定結果はどうなっている」
「ちょっと待ってください。えーっと、これじゃなくてこれでもなくて…ああ、ありました。現場で発見された弾丸の旋状痕と一致しました。でも指紋は見つからなかったそうです」
「指紋が重要だってのは、今時は素人だって知ってるからな。手袋でもしてたんだろうよ」
一つ一つ証拠を積み上げ、悪党を捕まえる。絶え間の無い営み。これが彼らの仕事なのである。
キャラクター
- テオ・コジャック警部補(Lieutenant Theo Kojak) - 演:テリー・サバラス CV:森山周一郎
- ボビー・クロッカー巡査部長(Sergeant Bobby Crocker) - 演:ケビン・ドブスン CV:津嘉山正種
- フランク・マクニール警部(Captain Frank McNeil) - 演:ダン・フレーザー CV:柳生博
- スタブロス刑事(Detective Stavros) - 演:ジョージ・サバラス(デモステネス) CV:神山卓三
セットや小物類
概要で述べたとおりリアルさを追求されている事から、これらもリアルに作られている。
分署や分隊室の内部は、1970年代当時に使われていたNYPDのそれをよく再現しているといわれている。第1シーズンにおいては、パトカーに黒・緑・白が配色され、屋根の真ん中に赤白混合の警光灯が一つ付き、その前にサイレンが付く。これは当時のスタイルである。
本物の13分署の外観はこんな感じ。稲妻が「1」を貫いている絵が描かれたシャッターがあるが、緊急対応部隊第1分隊(Emergency Service Squad 1:ESS1)の車庫である。
リメイク
2000年代に入ってからリメイクされたけど、すぐに打ち切りになったらしいよ。
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関連項目
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