ノーザンファームと社台スタリオンステーションの代表を務める、日本の生産界を中心人物の一人である
父は現在の社台グループの祖である吉田善哉、兄は社台ファーム代表の吉田照哉、弟は追分ファーム代表の吉田晴哉、息子はサンデーレーシング代表の吉田俊介
概要
1948年、社台グループの祖、吉田善哉の次男として生まれる。兄が照哉、弟が晴哉と父の「哉」を受け継いでいるのになぜ勝己は「哉」という名前を継いでいないのかというと、彼が生まれた年は偶然にもこの「哉」の字が人名用漢字として認められていなかったかららしい。
若い頃から海外での仕事を任されることが多かった兄の照哉とは対照的に、勝己は一度海外を任されたもののそこで遊び呆けたためか国内での仕事が多かった、父の善哉から主に任されたのは「馬を売って、代金を回収する」という至ってシンプルな仕事……であったのだが、これが非常に大変であったと勝己は自身の手記で述べている。勝己は大学卒業とほぼ同時に父親の経営する社台ファームで働くように命じられたのだが、当時の社台は今のように大レースに大量の競走馬を送り込めていたわけでもなく、コンスタントに八大競走のような大レースで勝利を挙げられていた訳でもなかったため、今ほど社台グループ生産馬の需要は高くなかった。一方で生産規模は巨大であり、大量の馬を売って資金を回収しないと規模の大きさによって発生する巨額の維持費に押し潰されて倒産してしまうという爆弾を抱えており、勝己は社台の存亡という大学を卒業したばかりの若者には大きすぎるプレッシャーの中で、必死に馬を売って資金を集めるという地獄を味わうことになった。ある時はスタッフの給料日寸前まで給与の支払いの目途が立たなかったり、またある時はそんな危機を乗り越えたとホッとしていた矢先に父が「馬、買って来たぞ!」と海外のセリの請求書を出してきて呆然としたりと、巨額の投資を行う父の尻拭いに追われ、苦労が絶えなかったようである。
そんな苦労をする一方で、現在のノーザンファームの前身である社台ファーム早来の建設作業にも従事し、1971年に完成を迎え、完成後は場長を任される。完成後はアンバーシャダイを皮切りに多数のG1馬を輩出し、サクラバクシンオーやベガ、エアグルーヴといった現在の日本競馬の血統に大きな影響を与える名馬も生産している。先述の通り日本での仕事が多かったことから、日本独自の血統を育てることにも強いこだわりを持っていたようで、サッカーボーイの繋養先を巡って輸入種牡馬優位を主張する父と対立したことは有名である。
1993年、父の吉田善哉が亡くなると、社台グループの分割再編により社台ファーム早来はノーザンファームとなり、勝己は引き続き代表を務める。2000年代前半頃までは兄の照哉が率いる社台ファームに押され気味であったが、キングカメハメハやディープインパクトを輩出しその2頭が種牡馬入りして活躍し始めた2010年代になると、上記2頭の産駒の活躍に加え、長年続けていた繁殖牝馬への投資の成果、ノーザンファーム天栄・しがらきといった外厩設備の充実、権限を各部門に与える等の成長に耐えうる組織作り等の施策により、徐々に力関係が逆転していき2012年以降生産者リーディングで常に首位を堅持しており、時には2~10位の賞金額を足してもノーザンファームに及ばない年もあるなど、生産界の絶対王者としての地位を不動のものとしている。
相馬眼に関するエピソード
ノーザンテーストをはじめ様々な名種牡馬を見出した吉田照哉や安馬の中から激走する馬を見抜くことに長けた岡田繫幸の相馬眼は有名であるが、吉田勝己にも極めて優秀な相馬眼を示すエピソードが存在している。
先述した通り、吉田勝己の若い頃の仕事は社台ファーム早来の場長としての仕事と馬を売ることが主であり、馬を買う経験は殆どなかったとしている。その為海外のセリで馬を買ったのは社台ファーム早来設立から20年後の1991年のタタソールズ・ディセンバーセールが初めてと非常に遅かった。だが、彼はそこで
フサイチコンコルド、アンライバルド(皐月賞)、ボーンキング(京成杯)等の母、孫世代以降だとバランスオブゲーム、ブルーコンコルド、カンパニー、リンカーン(重賞3勝、GⅠ二着3回)、ヴィクトリー(皐月賞)、アドミラブル(青葉賞)、アリストテレス等、子孫に活躍馬多数
ローザネイの活躍
薔薇一族の始祖、ロゼカラー(デイリー杯2歳S)、ロサード(重賞5勝)、ヴィータローザ(重賞3勝)等の母、孫世代以降だとローズバド(重賞2勝、G1二着3回)、ローゼンクロイツ(重賞3勝)、ローズキングダム、スタニングローズ等
……これを見て「嘘だっ!」と思った人、それが正常です。これが初めての海外セリと言われてもにわかには信じがたい相馬眼である。
他にもマンファス(キングカメハメハの母)、ラヴズオンリーミー(リアルスティール、ラヴズオンリーユーの母)、トキオリアリティー(リアルインパクト、ネオリアリズムの母)等の名繁殖牝馬を自身で落札している他、尻尾の無い名牝として有名なハルーワスウィートの素質をデビュー前から高く評価し開業直後の友道康夫厩舎に推薦しているなど、繁殖牝馬を見る目に関しては生産者界においても随一と言って過言ではない。また、ノーザンファームでは代表の吉田勝己とゼネラルマネージャーの中島文彦を中心としたスタッフと相談して導入・放出する繁殖牝馬を選定しており、繁殖牝馬の目利きは国内の牧場の中でも随一と言われている。ノーザンファームが10月頃に開催しているノーザンファームミックスセール等で気前よく良質そうな繁殖牝馬を放出しているが、その時に放出する繁殖牝馬は血統や競走成績が良くても、その選定から漏れた牝馬であるということである。実際、先述したハルーワスウィートや同じようにG1馬を3頭輩出したクリソプレーズに代表される競走成績は今一つでも、後にG1馬の母になる繁殖牝馬の殆どは牧場にキープして最初から一流どころの種牡馬と種付けしている場合が多い。
ちなみに、息子の吉田俊介も近年ではドバイマジェスティ(アルアイン、シャフリヤールの母)等の優秀な繁殖牝馬を見出して海外セリで購買しており、息子にもその繁殖牝馬の相馬眼は受け継がれているようだ。
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関連項目
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