屋根裏部屋の影とは、H・P・ラヴクラフト&A・ダーレスの小説である。
概要
屋根裏部屋の影とは、H・P・ラヴクラフト&A・ダーレスが1964年に発表した小説である。
原題は『The Shadow in the Attic』
青心社の『暗黒神話大系シリーズ クトゥルー 8』に『屋根裏部屋の影』として掲載、翻訳は後藤敏夫。
あらすじ
ある日、教師であるアダム・ダンカンは大伯父ウライア・ギャリスンの地所と資産を譲られていることを知らされた。
この遺産を相続する為の条件は『死後一年目の夏を屋敷で過ごす』
飛び込んできた幸い。
大叔父の屋敷は不気味で何の魅力も無かったが、アーカムに近い事から高額での売却が見込めるのだ。
『フィアンセと家を持つ』と言う『ささやかな夢』を実現する為に、ダンカンはアーカムに向かうのであった。
屋敷に何が待ち構えているとも知らずに・・・
登場人物
- アダム・ダンカン
ブラトルボロに住む英語学科の助教授。
大叔父ウライア・ギャリスンの地所とささやかな資産を譲られた。
遺言により遺産を相続する為には死後一年目の夏のあいだ屋敷で暮らさなければならない。
この遺産相続と言う幸いを掴むために、ダンカンは1928年6月に大伯父の屋敷を訪れた。
屋敷での予定は『トーマス・ハーディ』に関する博士論文の執筆。 - ウライア・ギャリスン
アダム・ダンカンの大伯父。
色が浅黒く、太い眉と乱れた黒髪が際立つその容貌は、幼い子の夢をおびやかすような物であった。
冷静で合理的だが冷淡で打ち解けない雰囲気を持ち、人付き合いが悪い上にハングマン川の墓地をよく訪れる様な変わり者、さらには古風な考えの持ち主で妖術に高い関心を持ち、多額の金をつぎ込んで『セイレムの魔女裁判』の調査を行うなど怪しげな研究もしていた。
アーカム在住で1928年の3月に亡くなった。 - ローダ・プレンティス
アダム・ダンカンのフィアンセで言語と考古学の講師。
青い目と肩までとどくアッシュ・ブロンドの髪をしている。
幌付きのオープンカーを乗ってアダムの住むギャスリン邸に訪れた。
彼女はギャリスン邸に『ぞっとする』様なものを感じているが、アダムは信じないのであった。 - 大伯父の家政婦
夜になると屋敷に現れ、家事を切り盛りしている。
若いような若くないような印象を与え、感情が現れない無表情な顔をしているが、目だけは生気に満ちている。 - ソントンストール
大伯父の顧問弁護士
高襟や重々しい黒の衣服を愛用している老人。
顧問弁護士だが屋敷を訪れた事はなく、大伯父がどの様な手配をしていたかも知らない。 - アダム・ダンカンの父親
大伯父に逆らった。
大伯父の屋敷から100マイル(160km)離れた自宅のベットで窒息死した。 - ソフィア
アダム・ダンカンの叔母で大伯父を非難した。
目に付くものの無い階段で足を躓かせて転落死した。 - ミセス・バートン
昔、大伯父の屋敷を訪れた老婦人。
屋敷に女を置いていることを非難した。
翌朝、自宅で心臓発作を起こし死亡した。
登場用語
- トーマス・ハーディ(1840~1928)
イングランド出身の作家、詩人。
代表作は『The Return of the Native(1878年)』、『The Mayor of Casterbridge(1886年)』、『Tess of the d'Urbervilles(1891年)』、『Jude the Obscure(1896年)』 - アーカム
アメリカ合衆国マサチューセッツ州エセックス郡の小さな街。
アイルズベリイ街道に沿って広がりはじめた街で大伯父の屋敷に迫るほどの広がりを見せている。
駒形切妻屋根がひしめく街で、二世紀前の建築の装飾物や街の伝承や伝説が特色となっている。
ボストンの北東、セイラムがモデルとなっている。 - ブラトルボロ(Brattleboro)
アメリカ合衆国バーモント州ウィンダム郡にある町でバーモント州の最南端、ウェスト・リバーとコネチカット川の合流地点に位置する。
バーモント州最古の町で人口は12,000人程度(2010年頃)、1920年代の人口は8,300人前後。
古くは辺境の砦、ウェットストーンフォールズ(砥石の滝)を利用した工場町として栄えた。
アダム・ダンカンが住んでいて、ギャリスン邸のあるアーカムからは北北西におよそ106マイル(170.6km)ある。 - ギャンブレル屋根
18世紀にヨーロッパからアメリカに伝承された二面切妻二段勾配屋根。
屋根の中心線から両側に2段階に折れ曲がった屋根がある形状は将棋の駒に似ていることから、駒形切妻屋根とも呼ばれる。
似た形状で屋根の中心点から四方に向かって2段階に折れ曲がった屋根がある形状はマンサード屋根と呼ばれ、ギャンブレル屋根と混同されることがある。
日本では小田急線の向ヶ丘遊園駅がギャンブレル屋根となっている。 - 大伯父の屋敷
ミスカトニック河南部のアイルズベリイ・ストリート、ハングマンズ・ヒルや樹木の茂った墓地からさほど遠からぬ場所にに建っており、地所の中をハングマン川が流れている。
200年前に建てられたこの屋敷は新しい設備は無く、電気も来ていない。
形状はアーカムに多い駒形切妻屋根で天井の高い部屋、昼間の出入りや灯りの持ち込みが禁止な屋根裏部屋、灌木や木々が望める小玻璃窓(小さなガラス窓)、扇型明り取りのついたドア等がある。
影が濃く不気味な印象があるが立地としては屋敷から半マイル(800m)と離れていない場所にミスカトニック大学付属図書館があり、研究者には最適な場所である。 - 大伯父の蔵書
『魔女への鉄槌』
オラウス・ウォルミウスのきわめて古い著書
エウナピスの著書
ドロシャの著書
アナニアの著書『デーモンの本性について』
ヴィネの著書『魔女の審問』
スタンパの著書『悪魔の遁走』 - オラウス・ウォルミウス
1228年に『ネクロノミコン』のギリシャ語版をもとにラテン語に翻訳した人物。
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屋根裏部屋の影はありません。
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関連項目
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