大きく目立つため意匠が問われる (神戸関電ビルディング、170m) |
超高層建築物とは、建築物を高さで区分する場合、高層建築物よりもさらに高い建築物のことを指すが、統一された定義はない。都会好きがよく使う言葉で、近代化、未来の象徴にもなっている。通称「超高層ビル」、中国語由来の熟語で「摩天楼」ともいい、英語では「skyscraper」(スカイスクレーパー、scrapeは削ぎ落とす、削る、覆い尽くすという意味)という。
- かつては池袋の「サンシャイン60」がアジア1高い建物として知られたが、後にマレーシア、台湾、上海、深セン…とアジア1高い建物は変遷している。
- 2015年現在、日本で一番高いビルは大阪市阿倍野区の「あべのハルカス」で300m。最高階60。いずれ抜かれるのはわかってるから、周囲の環境も加味して、この高さにした(ただ、商業建築としては全国で最も最高層)。
- 二番目に高いビルは横浜市西区の「横浜ランドマークタワー」で296m。高さではあべのハルカスに抜かれたが、最高階数70は日本一のままである。
- また、東京の常盤橋に標高390mのビジネスビルを建設中、「TOKYO TORCH」という名称を予定しており、完成すれば国内で一番高い超高層ビルとなる予定。
- 2023年には赤坂にも330mの超高層マンションが完成予定。完成すれば、4年間だけ日本一高い建物となるが、住居建築としては国内最高層である。
- 日本一超高層ビルの密度が高い場所は大阪市梅田界隈であり、2018年現在で、既に60本の超高層ビルが林立している。一方、梅田は航空法の制限で200m以上の建造物を建てられないために、200m級となるともともと浄水場があった西新宿界隈(通称、十二社)が最も密度が高い。また、東京都内だと都心部といわれる大丸有(大手町、丸ノ内、有楽町の総称)~新橋に至るエリアにも超高層ビル群があり、広域エリアだと日本一の密集地帯となっている。その他、神戸市の三宮、ポートアイランド界隈も密度が高いエリアとして知られる。
- また、将来リニア新幹線の停車駅となる名鉄名古屋駅に、全幅400mという、恰もそそり立つ壁のような巨大超高層ビルを計画しており、2027年竣工予定である。その他、名駅界隈には数本の超高層ビル建設計画があり、新宿や梅田に次ぐ超高層ビル街が発展しつつある。なお、名古屋も名古屋城の景観保護条例があったため、都市規模の割に超高層ビルが少なく、今も栄あたりは高層ビルは少ない。
概要
日本において超高層ビルは、100m以上のものを指すことが多く、海外のskyscraperの定義とほぼ一致している。大都市の東京、大阪、横浜、神戸、名古屋、札幌、仙台に集中しているほか、占冠村など一部のリゾートホテルにも見られる。
超高層ビルは地価が高い場所、再開発されている場所に建てられる場合が多い。理由はもちろん、土地が高騰するため、狭い土地に多くの収容能力を設けようとするからである。なので、ビルが立てられる地区は都会になる場所が多く、結果的にビルが多くある地域は都会の顔とみなされる場合が多い(日本以上に海外ではこれをスカイラインと呼び、重要視している)。だが、景観に影響されるとして規制をかけるところも多い。その例として京都(京都駅南部など例外エリアもある)、熊本、松山、金沢などがある。海外でもワシントンD.C.(景観条例だけではないが)、中国の西安、パリなどに例がある。
また、地震が多い土地柄と、航空法による高さ制限、更に居住地が近接しているために日照権問題なども影響して、現在の日本は、経済規模に対して超高層ビルが非常に少ない。航空法の影響を受けている都市やエリアとして大阪市のキタ(近年は規制緩和で超高層ビルが密集するようになった)や福岡市(緩和によって再開発中)、東京都品川区大崎(羽田空港の関係で140mまで)が挙げられる。また、広島市や大阪市中之島は砂州に位置するため高層ビルに適した地盤となっていない事情があった。
世界に先駆けて最も超高層ビル化が進んだのは、大火によって灰燼に帰した歴史を持つアメリカ五大湖沿岸の大都市、シカゴであり、火災に強いまちづくりを目指し、鉄筋コンクリート造りのビルが主流となり、高層化が始まった。また、ニューヨーク市はヨーロッパとの交流拠点として強靭な岩盤であるマンハッタン島を中心に発展し、超高層ビルが雨後の筍の如くそびえ、後にシカゴを凌ぐ規模となった。その後は、ニューヨークとシカゴを筆頭に、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル、ヒューストン、ダラス、フィラデルフィア、ボストン、アトランタ、マイアミ、サンディエゴ、ピッツバーグ、デンバー、デトロイト、ミネアポリスなど超高層ビルが何十本も建つ都市が至るところに存在するようになり、空路が主役のアメリカにとってスカイラインは都市の顔、目印として重要視されるようになった。アメリカの場合は本社機能を都心部に移転しないことが多いため、地方中心都市にも高層ビルが建つことも珍しくない。極端な例で、アイオワ州デモインは、人口10万程度(都市圏でも60万ほど)にもかかわらず、5本もの超高層ビルが建っている。しかし、アメリカの場合、中心地だけ都会だが、10キロも走れば農地、なんて都市も珍しくない。
カナダも超高層ビル化が著しく、トロントを筆頭に、バンクーバー、カルガリー、モントリオールでもかなりの密度で超高層ビルが建っている。特にトロントのダウンタウンは世界有数の規模であり、北米ではニューヨーク、シカゴの次に密度が高い。カルガリーなども人口規模から考えると相当な密度である。
中国もこの傾向が顕著で、アメリカを倣った都市計画を行っている。世界一の超高層ビル群を誇る香港を初め、経済成長著しい深セン、上海、広州、重慶のほか、北京、天津、大連、武漢、成都、瀋陽、南京、杭州、厦門(アモイ)、青島、蘇州などでも超高層ビルが目立ち、近年は南昌、鄭州、長沙、合肥、南寧など内陸の地方都市でも超高層ビル化が進んでいる。超高層ビルの本数はビジネスビル、商業ビルにおいてもアメリカに次ぐ多さとなっており、超高層住宅を含むと世界で最も多い。
アメリカ・カナダの北米や中国が世界の超高層ビル事情をリードしているが、近年は経済規模的には日本を下回る韓国・台湾・シンガポールなどの東アジア、東南アジア、南アジア各国においても、地盤が安定しているため300mを超えるビルの計画がかなりの数で存在しており、それまでの韓国のソウル、プサン、シンガポール、台湾の台北といった旧NIES諸国の都市だけでなく、マレーシアのクアラルンプール、フィリピンのマニラ、タイのバンコク、インドネシアのジャカルタ、ベトナムのハノイ、ホーチミンなどでも、アメリカの大都市に匹敵する超高層ビル群が見られるようになった。マレーシアのペトロナスツインタワーや台湾(但し、台湾は地震頻発国)の台湾101、上海の上海中心など500mを超える高層ビルがあったり、更に韓国では610mの高層ビルを建築中だったりするなど、超超高層ビル化は、開発に余地がある分、アメリカを上回っている。南アジアではインドのムンバイに超高層ビル群がある。
オーストラリアも人口に反して、超高層化が著しい。特にシドニー、メルボルンの二大都市とブリスベンはかなりの超高層ビルが建ち並ぶ。ニュージーランドのオークランドも小規模ながら超高層ビル群が見られる。
中東はドバイのイメージで、超高層ビルが多いイメージがあるが、その差は両極化している。そもそも、中東諸国はオイルマネーが潤沢にあるため、いちいち超高層ビルを立てて開発なんてしなくていい都市と、石油がないから逆に発展の基盤が必要だったドバイやジッダなどの都市に二極化している(クウェートやサウジアラビアのリヤドのように、両方ある都市もあるっちゃある)。また、ヨーロッパ、アフリカとの交流拠点であるイスラエルのテルアビブやトルコのイスタンブールも超高層ビルが建ち並ぶ大都市である。
ヨーロッパではフランクフルト、ベルリン、ロンドン郊外のドックランズ、パリ郊外のラ・デファンス、ロッテルダム、ミラノなどで見られるが、その多くは戦争で荒廃した地域や景観保護の対象外となっている近郊の再開発地区となっており、古くからの町並みとその保存がネックとなっている模様。しかし、近年はパリやロンドン、イタリアのナポリやギリシアのアテネでもグローバル社会に対応させるため超高層ビル街を作るなど市民の意識に変化が起きている。意外な所ではワルシャワ、スロバキアのブラチスラバなど東欧諸国で超高層ビルが発展している。モスクワは再開発が進んだ超高層ビルのエリアがあるが、ロシアのそれ以外の都市はそこまで超高層ビルは存在しない。その他中央アジアではアゼルバイジャンのバクーなどにもみられる。
他には中南米の都市も高層化が進んでおり、特にブラジルのサンパウロ、リオデジャネイロの二大巨大都市の発展が著しく、アルゼンチンのブエノスアイレスやベネズエラのカラカスも超高層ビルが建ち並ぶ。続いてペルーのリマ、コロンビアのボゴタなどに多い。中米ではメキシコシティ、パナマシティに超高層ビルが建ち並ぶ。
アフリカでは南アフリカを筆頭に他の国でも超高層ビル化が計画されている。しかし、都市中心部のスラム化が深刻化しており、空洞化が大問題となっているため、それが超高層ビル発展を妨げている。
なお、2017年現在、世界一高いビルはアラブ首長国連邦のドバイにある「ブルジュ・ハリファ」の828mであるが、ジッダで1000メートル超えの「キングダムタワー」が2020年以内に開業予定、更に世界中では900m、更には1000m以上の高層ビル建築予定がいっぱいある。なお、ブルジュ・ハリファ以前は、長らくシカゴのシアーズタワー(当時、現在はウィリスタワー)が世界一高いビルとして知られていた。
ちなみに、今までは100m以上を超高層ビルとして定義してきたが、世界で超高層ビルと定義される、共通の明確な定義は存在しない。実際、下に挙げるように500フィート以上(だいたい150m)を定義とする例もあり、それぞれの国や研究機関によって異なっている。また、200m以上とする場合、300m以上とする場合もある。なお、かつては200フィート以上(だいたい70m以上)が超高層ビルとされてきた。
また2019年8月現在、世界で一番超高層ビルが多い都市は香港であり355棟(※)という膨大な数のビルがある。続いてニューヨーク(280)、深セン(222)、ドバイ(190)、上海(159)、東京(155)…の順番である。また、北京、ソウル、トロント、大阪、バンコク、ジャカルタ、シンガポール、シドニー、パナマシティなども100本以上の超高層ビルがある。
(注※香港、以下各都市の150m以上を基準とした超高層ビルの数、なお100m以上とするempolisの数値によると、香港は1400本弱となり、ニューヨークの約2倍である)
更に、超高層建築物は超高層ビルと超高層の塔(タワー)・尖塔(スクレイプ)を足して自立式建造物と呼ぶ。超高層建築物という括りにすると、電波塔などの塔・尖塔を含み、特に海外では電波塔は景観制約の例外となり、この塔をランドマークとする例も多い。世界の有名な塔ではカナダ・トロントのCNタワー、ベルリンのベルリンテレビ塔、東京都墨田区押上の東京スカイツリー、上海の東方明珠電視塔、モスクワのオスタンキノ・タワー、シドニーのシドニータワー、ニュージーランド・オークランドのスカイタワーなどがあり、世界には800m級の尖塔の建設計画もある。また、目立つ高さではなくなったがシアトルのスペースニードルもかつては市で最も高いランドマークとなっていた。
ニコ百内に単独記事のある超高層建築物一覧
※高さ100メートル以上のもののみ。
居住ビルでないものは斜体。
数字順→アルファベット順→あいうえお順。カッコ内は所在市区町村名。
日本国内
- NEXT21(新潟県新潟市中央区西堀通) 128メートル
- あべのハルカス(大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋) ※商業ビル(一部居住エリアあり)としては日本最大 300メートル
- 梅田スカイビル(大阪府大阪市北区大淀中) 173メートル ※ピラミッドやタージマハルなどとともに、イギリスの雑誌によって世界の20大建造物に選ばれた。空中庭園が有名で、地上173mから仕切り無しでパノラマが広がる。開放型の屋上展望台としては世界最高所レベルとなっており、欧米人観光客が多い。
- 大阪府咲洲庁舎(大阪府大阪市住之江区南港北) 256メートル
- 歌舞伎座タワー(東京都中央区銀座) 145.5メートル
- グランフロント大阪B館(大阪府大阪市北区大深町) 175.3メートル
- 神戸市役所1号館(兵庫県神戸市中央区加納町) 132メートル
- ゴールドタワー(香川県綾歌郡宇多津町浜一番丁) 158メートル ※町にある国内最大の高層建築。
- サンシャイン60(東京都豊島区東池袋) 239.7メートル ※かつて日本一となり、池袋の名を一躍全国区とした建築。
- 渋谷ヒカリエ(東京都渋谷区渋谷) 182.5メートル
- スカイタワー41(山形県上山市宮脇字下川原) 133.95メートル ※超高層分譲マンションで、予定では複数本建てる予定だった。田園にぽつんと佇む姿が印象的だが、方角を変えれば、普通に市街地郊外に建っている。
- セルリアンタワー(東京都渋谷区桜丘町) 184メートル
- ツインアーチ138(愛知県一宮市光明寺字浦崎) 138メートル
- 東京スカイツリー(東京都墨田区押上) ※自立式展望タワー含め国内最大。また尖塔としては現時点で世界最高である。 634メートル
- 東京タワー(東京都港区芝公園) 332.6メートル ※333mとして覚えられている。また、タワー自体は増上寺境内にある(日本一高い寺内建造物)。
- 浜松アクトタワー(静岡県浜松市中央区板屋町) 212.77メートル
- ホテル京阪ユニバーサルタワー 旧称:ホテル日航ベイサイド大阪(大阪府大阪市此花区) 138メートル
- 代々木ゼミナール本部校(東京都渋谷区代々木) 134メートル
- 横浜ランドマークタワー(神奈川県横浜市西区みなとみらい) 296.33メートル
- 四日市港ポートビル(三重県四日市市霞) 100メートル
- りんくうゲートタワービル(大阪府泉佐野市りんくう往来北) 256.1メートル
日本国外
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参考文献
関連項目
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