ファッショニスタ(Fashionista)とは、2014年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牝馬。
6歳まで22戦して馬券を外したのは3回、掲示板を外したのは一度だけという安定感抜群の成績を残し、3度目の正直のJBCレディスクラシックで断然人気のマルシュロレーヌを破った、ダーレー・ジャパンのダート牝馬代表。
主な勝ち鞍
2019年:スパーキングレディーカップ(JpnⅢ)
2020年:JBCレディスクラシック(JpnⅠ)、スパーキングレディーカップ(JpnⅢ)
概要
父*ストリートセンス、母*アクアリスト、母父*コロナドズクエストという血統。
……日本ではあまり見ない名前なので、ちょっとピンと来ない人もいるかもしれない。
父は2007年のケンタッキーダービー馬で、他に2006年BCジュヴェナイル、2007年トラヴァーズステークスとG1を3勝したStreet Cry産駒。BCジュヴェナイル勝ち馬では史上初のケンタッキーダービー馬である。カタカナ表記だけど日本で種牡馬入りしてたっけ?と思った人もいるかもしれないが、アメリカのダーレーグループの牧場で種牡馬入りし、2013年に1年間だけ日本のダーレー・ジャパン・スタリオンコンプレックスで供用された。ファッショニスタはそのときの産駒である。他の同期産駒に日本テレビ盃を勝ったフィールドセンス、初年度産駒の持込馬にエルムSを勝ったフリートストリートなどがいる。
母はイギリス産馬で、自身は未出走。ファッショニスタは第4仔である。3代母Brigidの牝系は欧州を中心に多数の活躍馬を出している名牝系で、日本では2023年の阪神JF勝ち馬アスコリピチェーノなどが同じ牝系に属する。
母父はアメリカでG1を2勝した*フォーティナイナー産駒。2004年から日本で供用されたが2006年に急死してしまい、日本では3世代しか産駒を残せなかった。日本での目立った活躍馬は交流重賞を3勝したセレスハントぐらいである。
2014年3月25日、日高町のダーレー・ジャパン・ファームで誕生。オーナーはもちろんロイヤルブルーの勝負服でおなじみゴドルフィンだが、2018年3月まではH・H・シェイク・モハメド殿下の個人名義で、勝負服も海老茶・白袖のものであった。
記事冒頭に記した通り安定感抜群の成績を残したが、川田将雅曰く「気難しい馬」「走る気になってくれているときは、いい走りをしてくれます」、大野拓弥曰く「集中力にムラがある」とのことで、気性はけっこうムラっ気だったらしい。ムラっ気があってこの成績だったということは、ムラっ気がなければもっと安定した成績だったのかもしれない。
ストリートのファッションリーダー
2歳~4歳(2016年~2018年)
トランセンドやロードカナロアでおなじみ、栗東の安田隆行厩舎に入厩。デビューは2016年12月17日、阪神ダート1400mの新馬戦だった。川田将雅を鞍上に、単勝1.3倍という断然人気に支持されたファッショニスタは、4番手先行から直線で逃げ馬を悠々とかわして2馬身半差の快勝デビューを飾る。以降、基本的に川田将雅が主戦となり、4歳6月まで一貫してダート1400m戦を走り続けることになる。
明けて3歳、1月の初戦の500万下(京都)は北村友一が騎乗したが、スタートで後手を踏んで後方からになってしまい、馬群の中から上がり最速タイで追い込んだものの、前の勝ち馬に同じ最速タイの脚を使われてしまっては届くはずもなく2着。
2月のデビュー戦と同条件の500万下では鞍上は川田に戻り、馬群の後方から大外を上がり最速で一気に追い込んで豪快に差し切り勝ち。
4ヶ月休んで6月の1000万下・清里特別(東京)では戸崎圭太が騎乗したが、中団から4戦連続の上がり最速も2番手から押し切った勝ち馬に届かず2着。
また3ヶ月休んで、9月の阪神の1000万下で川田を鞍上に復帰すると、今度は3番手で先行して直線を押し切り3勝目。
11月の1600万下・貴船S(京都)では中団から上がり最速も先行馬に届かず2着。
また4ヶ月休み、明けて4歳初戦の3月、播磨S(阪神)では3番手で先行したが、後の重賞馬テーオーヘリオスの逃げ切りを許し2着。
ここで馬主名義がゴドルフィンに変わり、勝負服もロイヤルブルーのものとなった。勝負服が変わって初戦の鳴門S(阪神)では1.8倍の支持に応え、4番手から抜け出して後続を寄せ付けず快勝。
オープンに昇格し、初戦は京都の栗東S(OP)。川田がヴィクトリアマイルに行っていたため松若風馬が騎乗、1番人気に支持されたが、スタートで後手を踏んで最後方からのレースになってしまい、雨の不良馬場も祟ったか9着撃沈。結局、これが生涯唯一掲示板を外したレースとなり、このあと1600万下に降級となる。
降級初戦の安芸S(阪神)は積極的に2番手で先行し直線で抜け出したが、後ろから差されて2着。ちなみにここで後にJBCレディスクラシックで戦うヤマニンアンプリメ(4着)と初顔合わせを果たしている。
続く平城京S(京都)では初めて1800mに距離延長。前目でレースを進めたが、逃げた後の重賞馬アイアンテーラーをクビ差捉えきれず2着。
さて、この時点で1600万下の条件馬に過ぎないファッショニスタは、通常なら交流重賞、ましてJpnⅠの挑戦には全然収得賞金が足りないところである。ところがこの2018年はJBCがJRA主催の京都競馬場開催で、JBCレディスクラシック(JpnⅠ)も例年は中央枠が6枠とか7枠しかないところ、16頭立てで地方馬が4頭という例年とは逆の枠配分だった。条件馬のファッショニスタもおかげで普通に出走できたのである。大野拓弥がテン乗りとなり、本命不在の混戦ムードもあってか、ファッショニスタは条件馬ながら11.9倍の5番人気に支持された。
レースは大外枠からスタートで後手を踏んでしまい最後方からのレースとなってしまったが、4コーナーで捲るように進出すると直線では大外を猛然と追い込む。ほぼ同じ位置の先行策から並んで抜け出したアンジュデジールとラビットランの激しい叩き合いに一気に詰め寄ったが、最後は半馬身届かず3着。敗れたものの力強い末脚で、1800mの距離とダート牝馬の一線級に通用する実力を示した。
このレース内容で、自己条件に戻った12月の堺S(阪神ダート1800m)では1.6倍の断然人気に支持された……のだが、テン乗りの福永祐一と手が合わなかったか、直線で伸びず4着。
5歳(2019年)
明けて5歳、距離を1400に、鞍上も川田に戻して去年と同じ3月の播磨Sで始動すると、積極的に前に出てハナを切りに行き、直線では悠々と後ろを振り切って3馬身差で快勝。オープンに復帰する。
これで6月の天保山S(OP)でもハナを切りに行き、直線では2番手からかわしにかかったフュージョンロックを差し返したが、外から後のみやこS勝ち馬ヴェンジェンスに差し切られて2着。
ここから陣営は牝馬ダート交流重賞路線へ向かう。7月の川崎・スパーキングレディーカップ(JpnⅢ)に参戦。初のナイター、初の川崎、初の1600m、関東輸送は2回目となんかいろいろ不安要素もあったものの2.7倍の1番人気に支持されると、逃げる同期サルサディオーネを2番手で追走。逃げ粘るサルサディオーネを残り200m過ぎで捕まえると、あとは突き放して4馬身差で圧勝。鮮やかに重賞初制覇を飾った。
夏休みを挟み、JBCレディスクラシックを目指して大井のレディスプレリュード(JpnⅡ)へ。大野拓弥が2度目の騎乗となり2.6倍の1番人気に支持され、前走同様に逃げるクレイジーアクセルを2番手で追走。直線残り200mで捕まえて抜け出したが、後方から追い込んできたアンデスクイーンとの追い比べに競り負け、差し切られて2着。
そんなわけで迎えた2度目のJBCレディスクラシック(JpnⅠ)は、今度は浦和競馬場1400mでの開催。前走から400mの距離短縮となるし初の浦和だが、まあ元々1400mをメインに走ってきた馬だし、鞍上も川田に戻ったしで2.4倍の1番人気に支持される。
しかしこの距離の重賞で結果を出していた面々に対して、そう簡単に勝てるほど甘くもなかった。ホームストレッチで4番人気モンペルデュが内ラチにぶつかって落馬するアクシデントもある中、大外枠のファッショニスタは前目の位置を取りに行き、向こう正面で2番手につけて逃げるゴールドクイーンを追いかける。が、3コーナーでそんなファッショニスタをあっさりかわしていくのは、昨年の安芸Sで顔を合わせていたヤマニンアンプリメ。1200mの重賞2勝馬と1400mの重賞馬の争いには全くついていけず、1着ヤマニンアンプリメからは8馬身、2着ゴールドクイーンからも6馬身離された完敗の3着であった。
6歳(2020年)
明けて6歳も現役続行。この年のJBCは大井開催ということもあってか、同条件のTCK女王盃(JpnⅢ)から始動する。2.5倍の1番人気に支持されたが、中団からあまり見せ場なく4着とやや不安な滑り出し。
次走は久々の中央となる栗東S(L)。この年も川田はヴィクトリアマイルに行っていたので鮫島克駿がテン乗り。好スタートからハナ争いに加わらず3番手の好位先行を選択したが、逃げ粘ったサクセスエナジーを捕らえきれず3着。
続いて連覇を目指してスパーキングレディーカップ(JpnⅢ)へ。川田が戻ったここは1.9倍の断然人気に支持される。レースは田んぼみたいな不良馬場の中、大井に移籍して矢野貴之という相棒を見つけたサルサディオーネが今年も逃げを図るが、最内枠からファッショニスタはそれに絡んでいって脚を使わせると、2番手で追走。3歳馬メイクハッピーがマークして被せてきて、直線では3頭の追い比べとなったが、最後のひと伸びで2頭の間から抜け出し連覇達成。大一番へ弾みを付けた。
というわけで今度は前哨戦を使わず、JBCレディスクラシック(JpnⅠ)へと直行。しかしここには、ダート転向から2戦2勝、前走レディスプレリュードを別次元の末脚で完勝してきた4歳馬、後のBCディスタフ勝ち馬マルシュロレーヌが待ち構えていた。しかも向こうも川田将雅が主戦であり、川田騎手はマルシュロレーヌを選択。相棒を奪われたファッショニスタは三浦皇成が騎乗予定だったが、病気で乗れなくなり、最終的に500万下で一度騎乗経験のある北村友一が騎乗することになった。当日はマルシュロレーヌが1.3倍の断然人気で、ファッショニスタは2番人気に支持されたが8.2倍である。集中力を高めるため、当日はブリンカーを着用して臨んだ。
レースは例によってサルサディオーネが逃げ、ファッショニスタは2番手でそれを追う。北村友一曰く3コーナーでは手応え悪く鞭が入る状態だったが、内からマドラスチェックが並んできたことでファッショニスタの勝負根性に火が点いた。直線では後ろでマルシュロレーヌが伸びあぐねるのを尻目に、サルサディオーネをかわすとマドラスチェックと2頭での激しい叩き合いに突入。300m弱に渡るマッチレースとなったが、最後はアタマ差振り切ってゴール板へと飛び込んだ。
3度目の正直でJBCレディスクラシック制覇。北村友一騎手は古馬の交流GⅠ級はこれが初勝利。世界中に数々の名馬を抱えるゴドルフィンも日本のダートGⅠ級はこれが初勝利となった。
引退後
2021年から故郷のダーレー・ジャパン・ファームで繁殖入り。しかし初年度はキズナ、2年目は*パイロをつけたようだが前者は無事に生まれず後者は不受胎だったようで、まだ産駒は生まれていない。2024年はキタサンブラックをつけたそうなので、初仔の誕生に期待したい。
血統表
*ストリートセンス 2004 鹿毛 |
Street Cry 1998 黒鹿毛 |
Machiavellian | Mr. Prospector |
Coup de Folie | |||
Helen Street | Troy | ||
Waterway | |||
Bedazzle 1997 鹿毛 |
Dixieland Band | Northern Dancer | |
Mississippi Mud | |||
Majestic Legend | His Majesty | ||
Long Legend | |||
*アクアリスト 2003 栗毛 FNo.9-b |
*コロナドズクエスト 1995 栗毛 |
*フォーティナイナー | Mr. Prospector |
File | |||
Laughing Look | Damascus | ||
Laughter | |||
Oyster Catcher 1996 鹿毛 |
Bluebird | Storm Bird | |
Ivory Dawn | |||
Brigid | Irish River | ||
Luv Luvin' |
クロス:Mr. Prospector 4×4(12.50%)、Raise a Native 5×5×5(9.38%)、Northern Dancer 4×5(9.38%)、Riverman 5×5(6.25%)
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