ロックドゥカンブ(Roc de Cambes)とは、2004年生まれの日本の競走馬。青鹿毛の牡馬。
ニュージーランドから彗星のように現れ、そのまま彗星のように去っていった馬。
主な勝ち鞍
2007年:セントライト記念(JpnⅡ)、ラジオNIKKEI賞(JpnⅢ)
概要
父Red Ransom、母Fairy Lights、母父Fairy Kingという血統の外国産馬。
父レッドランサムはアメリカのRoberto産駒で、3戦2勝で重賞未出走ながらデビュー戦でコースレコードを叩き出した快速を買われて種牡馬入り。Electrocutionistを筆頭に種牡馬として成功を収め、南半球にもシャトルされて活躍した。日本ではエリザベス女王杯を連覇したスノーフェアリーの祖父というのが一番わかりやすいか。
母フェアリーライツはアイルランド産で5戦未勝利。3代母Gailyの牝系からはピルサドスキー・ファインモーション兄妹や、阪神JF馬タムロチェリーなんかが出ている。
母父フェアリーキングは大種牡馬Sadler's Wellsの全弟で、これまた1戦未勝利で種牡馬入り。種牡馬としては高松宮記念馬*シンコウキングなど主に短距離馬を出したが、中長距離でも凱旋門賞馬*エリシオやジャパンカップなどを勝った*ファルブラヴを出すなど成功を収めた。
そんな血統のロックドゥカンブの誕生日は、2004年9月29日。……9月? そう、彼は季節が逆になるので繁殖シーズンも逆となる南半球産馬、ニュージーランド生まれの馬である。
南半球生まれであっても馬齢は同じく1月1日に加算されるので、北半球生まれの馬たちよりも、ほぼ半年の遅生まれになる。世代戦ではこの半年の差は大きなハンデになるため、JRAでは南半球産馬には4歳の夏まで斤量の優遇措置が設けられている。詳しくはJRA公式の負担重量のページを参照。
2006年4月、豪州のイースター・イヤリングセールにて13万豪ドル(約1270万円)でノーザンファーム代表・吉田勝己に落札され、日本へとやって来ることとなった。
オーナー名義はその妻である吉田和美。吉田和美名義の所有馬は外国産馬が中心で、1歳上の豪州生まれのフジキセキ産駒・キンシャサノキセキも同オーナーであった。
馬名意味は「岩(仏)+フランスの地名。ワイン名より」。ちなみにワイン名は一般的に「ロック・ド・カンブ」と表記される。その名の通りフランスのワインで、ニュージーランドとは特に関係はない。なんでNZ産馬にフランス関係の馬名をつけたのかは不明。
ミドルアースのワイナリー
半年のハンデもなんのその
キンシャサノキセキと同じく、当時開業5年目の美浦・堀宣行厩舎に入厩したロックドゥカンブ。
2007年3月17日、阪神・芝1800mの新馬戦にて安藤勝己を鞍上にデビューしたときも実年齢はまだ2歳6ヶ月に満たず、負担重量は牝馬と同じ54kgだった。1.9倍の断然人気に支持されると、2番手追走から楽に抜け出して快勝。ちなみにこのとき逃げて3着に残したのは後にエリザベス女王杯で大波乱を起こすクィーンスプマンテだった。
続いて6月の中京・芝2000m、マカオジョッキークラブトロフィー(500万下)も半馬身差しきって2連勝。ただ、安藤勝己は「体が緩いからか、スッとスピードに乗ることができず、3〜4コーナーではダメかと思った」と、まだまだ成長途上だなあというコメントを残していた。
しかし陣営は続いて彼を福島のラジオNIKKEI賞(JpnⅢ)に送り出す。鞍上は新たに柴山雄一を迎え、52kgという軽ハンデを貰ったロックドゥカンブは5.0倍の2番人気に支持された。レースはズブさを補うために柴山騎手が早めに仕掛け、好位先行から4角でもう先頭に立つと、後にJCを勝つ14番人気の伏兵スクリーンヒーローの追撃を寄せ付けず1馬身半差で快勝。見事に重賞初制覇を飾る。
ニュージーランドの馬といえば日本ではホーリックスなんかが有名だが、ニュージーランド産の日本調教馬による中央平地重賞勝利は、これが実に50年ぶりのことであった。
この勝利で、11月に豪州で行われるG1ヴィクトリアダービーに予備登録、あちらでも注目を集めたが、日本国内での馬インフルエンザの流行で遠征を断念。目標を菊花賞に定めることになった。
というわけでトライアルのセントライト記念(JpnⅡ)へ。鞍上は藤田伸二に乗り替わりの予定だったが、藤田が負傷したため柴山が引き続き騎乗することになった。ダービー6着のゴールデンダリアと人気を分け合い2.9倍の1番人気に支持されたロックドゥカンブは、好位先行からスムーズに抜け出すと、広報から猛然と追い込んできたゴールデンダリアを並ばせず、逆に突き放して完勝。
デビューから無傷の4連勝。半年のハンデを背負った南半球生まれのロックドゥカンブは、そのハンデをものともせず、一躍世代のトップへと躍り出ようとしていた。
世代の頂点を目指して
迎えた菊花賞(JpnⅠ)は混戦ムードになっていた。ダービー馬ウオッカは秋華賞に向かい、神戸新聞杯を勝った2歳王者ドリームジャーニーも、同3着の皐月賞馬ヴィクトリーも距離が不安。同2着のダービー2着馬アサクサキングスは春に皐月→NHKマイル→ダービー→宝塚というクソローテを走らされているし、ダービー1番人気フサイチホウオーは神戸新聞杯12着惨敗。となると無傷4連勝の上がり馬で2kgの斤量優位もあるロックドゥカンブに人気が集まったのも自然なことだろう。柴山雄一とロックドゥカンブのコンビは、3.5倍ながら1番人気に支持された。
しかしレースはスタートがあまり良くなく、中団馬群の後方に構えることになった。ホクトスルタンが淡々としたペースで逃げ、先行勢が崩れ始めると5番手の好位にいたアサクサキングスが進出を開始。馬群のインにいたロックドゥカンブはなかなか動き出せず、直線に入ったところでもまだ後方にいた。そこからインを突いて馬群を抜け出して猛然と追い込んだが、先に抜け出したアサクサキングスとそれを追ったアルナスラインの激しい叩き合いに1馬身半届かず3着。柴山騎手の初GⅠ、51年ぶりの南半球産馬による八大競走制覇の夢はあえなく散った。
なお、この敗戦でこの年の中央GⅠは1番人気が12連敗。この記録は2022年に更新されるまで15年間残ることになった。
続いて有馬記念(GⅠ)に参戦。鞍上には新たにマイケル・キネーンを迎え、7.5倍の4番人気に支持される。道中は中団に控えたダイワメジャーをその後ろでマークして進めたが、インで早めに仕掛けたダイワメジャーに対して外を回されて上手くついていくことができず、直線で馬群を縫って抜け出したときには時すでに遅し、マツリダゴッホの4着。同期ダービー馬ウオッカ(11着)には先着したが、ダイワスカーレット(2着)には全く届かなかった。とはいえ実年齢的には3歳3ヶ月、他の馬であればダービーか夏競馬を走っている時期に53kgとはいえ有馬記念4着は、古馬となってからの大成に大きな期待を持たせる結果と言えた。
……はずだった、のだが……。
夢破れて山河あり
5ヶ月ちょっと休み、目黒記念(JpnⅡ)にて岩田康誠を迎えて復帰したロックドゥカンブ。4.1倍の2番人気に支持され、最内枠からスムーズに前目を取って逃げるホクトスルタンを3番手の好位で追ったが、逃げ粘るホクトスルタンに突き放され、1番人気アルナスラインにもかわされて3着。
そしてそのまま、宝塚記念(GⅠ)に向かったロックドゥカンブと岩田康誠。キングジョージや凱旋門賞に予備登録しており、ここでの結果次第では昨年断念した海外遠征へと向かう予定だった。だが……。
逃げるエイシンデピュティを2番手で追ったロックドゥカンブは、直線でずるずると力なく失速。12着でゴールしたあと、岩田騎手が下馬し、アクシデントが起きたことは明らかだった。
診断は、左後繋靭帯断裂。競走能力喪失級の故障だった。
7月、中央登録抹消。現役引退となった。通算8戦4勝 [4-0-2-2]。
南半球から彗星のように現れ、そのまま去っていったロックドゥカンブ。半年分のハンデをはねのけて3歳で菊花賞と有馬記念に挑んだのは、時期尚早だったのだろうか。1歳上のキンシャサノキセキが7歳と8歳で高松宮記念を連覇、晩成の名馬として活躍したことを考えれば、あるいは彼も、功を急がなければ、そんな可能性があったのかもしれない。それももちろん、可能性の話でしかないけれども。
柴山雄一騎手は2023年に現役を引退。結局GⅠを勝つことはできず、1番人気馬に騎乗したのもロックドゥカンブの菊花賞が最初で最後であった。
引退後
引退後は種牡馬入りと発表されたものの、脚の治療を優先していたのかしばらく消息が途絶え、2010年になって故郷のニュージーランドで種牡馬入りが発表された。
あちらでは一時は100頭を超える牝馬を集めたようで、2016年にHe’s Our Rokkiiがトゥーラックハンデキャップを制して産駒G1初制覇。2018年にはVin de Danceがニュージーランドダービーを制している。2024年現在はさすがに高齢もあってほぼ種牡馬引退状態のようで、産駒G1馬2頭はどっちも騸馬、他の重賞馬は牝馬ばかりのため残念ながら後継種牡馬は出ないままに終わりそうである。
血統表
Red Ransom 1987 鹿毛 |
Roberto 1969 鹿毛 |
Hail to Reason | Turn-to |
Nothirdchance | |||
Bramalea | Nashua | ||
Rarelea | |||
*アラビアII 1977 鹿毛 |
Damascus | Sword Dancer | |
Kerala | |||
Christmas Wind | Nearctic | ||
Bally Free | |||
Fairy Lights 1995 青鹿毛 FNo.11 |
Fairy King 1982 鹿毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | |||
Fairy Bridge | Bold Reason | ||
Special | |||
Gay Fantastic 1983 鹿毛 |
Ela-Mana-Mou | *ピットカーン | |
Rose Bertin | |||
Gaily | Sir Gaylord | ||
Spearfish |
クロス:Hail to Reason 3×5(15.63%)、Nearctic 4×4(12.50%)、Turn-to 4×5(9.38%)
関連動画
ラジオNIKKEI賞もセントライト記念も菊花賞も動画がないんですけど!
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