オラーシャ帝国(Empire of Orussia、Оруссия)とは、「ワールドウィッチーズ」シリーズに登場する国家である。
アニメ『ブレイブウィッチーズ』、小説『ブレイブウィッチーズ Prequel』シリーズの舞台。
概要
ロシア帝国(およびソヴィエト社会主義共和国連邦)をモデルとする君主制国家。首都はモスクワ。国旗は上から白赤青の横三色旗で、国籍マークは尾を引く赤い星。
欧州東部からアジア北部にかけて、ユーラシア大陸北部一帯を国土とする広大な領土を持つ大国。1億7000万人におよぶ人口を持つ。立憲君主制を採用してはいるものの、皇帝権はきわめて強く、事実上は啓蒙専制的な絶対君主制下といえる。国内政治は安定しているが、これは昔から続く怪異の脅威、皇帝のとっている自由主義的な姿勢、広大な領土各地域を貴族や皇帝任命の代官が統治することで成立している連邦制的な地方自治などが理由として挙げられている。
第二次ネウロイ大戦では、国土の中心である西部一帯(欧州地域)を多数のネウロイの巣によって占拠されたことで中東方面と東部・シベリア方面に国土が二分され、政府・国民の多くはシベリアに疎開した状況にある。欧州地域でも北部方面はいまだ人類が保持しており、反攻の拠点となっている。
地理
ユーラシア大陸の北部一帯、東西に大きく広がる大国で、その境界は西は欧州東部、南は中東、東は極東アジアにおよぶ。欧州方面では、北西方でバルトランドとスオムス、西方で帝政カールスラント、オストマルク、ダキアと国境を共有。南方では西からオストマン、ペルシア帝国、大モンゴル帝国の各国と、極東では浦塩の扶桑皇国領と接している。
国の中心は欧州に近い西部地域にあり、モスクワやペテルブルグ、ツァリーツィン、ハルキウ、キエフといった都市が集中する。北方にはバレンツ海に近いムルマンやノヴォホルモゴルイ、バルト海に面してはリバウ、突出してカールスラントとオストマルクの両国に食い込む最西部地域にはクラカウ、南部には黒海に面してセヴァストポリ、中東方面にはカスピ海沿岸のバクーといった諸都市がある。
欧州地域に対して、ウラル山脈を越えたシベリア一帯は居住に不適な寒冷地帯で、豊富な資源を持ちながらも開発が進んでいない。都市としては一大重工業都市チェリャビンスク、オムスク、東方への重要拠点ノヴォニコラエフスク、極東に位置するハバロフスクなどが点在し、シベリア鉄道が東西を結んでいる。中東方面も砂漠地帯が広がっているため、シベリア同様に低開発のままとなっている。
こうした広大なオラーシャの国土は、総じて大陸型ながら多彩な気候をもたらした。北極圏に近い高緯度地帯では夏でも雪が降る寒冷さからタイガやツンドラが広がるいっぽう、南方では過ごしやすい気候の草原地帯が広がっている地域もあるようだ。
バルト海最奥の都市ペテルブルグは、ペテルブルグ要塞を中心に、スオムス湾に面したネヴァ川河口地帯に広がるオラーシャの玄関口。名の由来であるピョートル1世大帝が、欧州諸国の都にも劣らないオラーシャの新首都を目指して作り上げた壮麗な大都市であり、縦横に広がる運河から「北のヴェネツィア」としても知られている。ほど近いスオムスのヘルシンキまではスオムスとカールスラントの工兵の手で“ノペア号”と呼ばれる高速鉄道が整備されており、迅速な移動に益している。
バルト海に面した軍港リバウは、1241年のワールシュタットの戦い(ゲルマニア騎士団とモンゴル帝国の連合軍が怪異を撃退した戦い)の際に建設されたといわれる金属加工・造船業都市で、やがて人口減少とゲルマニア騎士団の西方帰還とともにオラーシャ領内となった。オラーシャは領内のバルト海岸で最西部に位置するリバウを不凍港として重視し、1890年以降軍港都市として発展。オストマルク、スオムスなどの援護に適した地理的条件から、第一次大戦以来、扶桑皇国による東ヨーロッパ支援の拠点となっている。
歴史
オラーシャ帝国の基礎となったのは、1480年に独立を宣言したモスクワ大公国である。それ以前のオラーシャ地域には、点在する小部族の中からルーリックによって建てられたノヴゴロド王国(862年)をはじめとする諸国家が存在し、西欧と交易を行っていたとされる。しかし、もともと怪異の頻発地域であったため、ひとたび強大化しても毎回怪異との戦いのすえに衰退し、1224年には南方でモンゴル帝国が怪異と戦闘するなど東西の諸国による怪異討伐の戦場となったこともあり国土の疲弊が進んでいた。
その中でゆっくりと強国へと成長していったモスクワ大公国は、イヴァン3世による独立の際に周辺諸国を併合して強大化。さらに孫のイヴァン4世“雷帝”はウラル山脈のむこう、カスピ海東岸まで手に収めて勢力圏を拡大し、正式に皇帝(ツァーリ)を称した。1703年にはピョートル1世“大帝”が新たにペテルブルグの建設を開始し、1851年には副首都モスクワとの間に鉄道が開通。沿線を中心に内陸の近代化と発展が進んでゆくこととなる。
こうした発展のいっぽうで、オラーシャは国内に頻発する怪異への恐れから新天地を求めて東方への拡大を続け、17世紀にはオホーツク海へと到達する。接触した扶桑とのあいだで19世紀半ばには一時衝突もあったものの、現地行政官はオラーシャ中枢からの距離のために交戦を断念し、対扶桑交易による共栄へと舵を切った。この間、1812年にはガリアのナポレオンによる黒海遠征と怪異との交戦があり、1853年には黒海クリミアで大規模怪異が発生(クリミア戦争)、各国の派兵も受けて討伐を果たしている。
こうしたオラーシャ帝国の発展と拡大は、ツァーリズムと呼ばれた強力な絶対君主体制の下で実行された。やがて時代の流れにあわせてオラーシャも立憲君主制を導入したが、先述の通り皇帝権力はいまだに強く、あくまで皇帝の主導で近代化と民主化が進められる啓蒙専制君主政治の様相を残している。
ネウロイ大戦とオラーシャ帝国
緒戦の敗北
1939年、黒海周辺でのネウロイの大規模出現によって第二次ネウロイ大戦が始まると、リバウに派遣された扶桑海軍遣欧艦隊が持ち前の長距離進出能力を活かし赫々たる戦果を挙げた。いわゆる「リバウ航空隊」の活躍である。いっぽう南方では、守りにくい黒海北方の平原から退きドニエプル川を絶対防衛線とするも中央部を突破され、モスクワを守るためスモレンスク-ブリャンスクの線まで戦線を後退。しかしネウロイは北上してノブゴロド南方に新たな巣(呼称“アンナ”)を出現させ、西欧とオラーシャとの間の交通の大半を遮断した。
“アンナ”出現により、オラーシャ方面に展開していたカールスラント他の各国連合軍の多くは本国から孤立。オラーシャ領内にはさらに“ヴァシリー”、“ボリス”といった巣が次々に出現する。オラーシャ軍は戦線を立て直しきれずに東方のウラル山脈および南方のカフカス山脈まで後退し、皇帝家や主要産業・国民もシベリアへの疎開を余儀なくされ、ヴォルガ川とウラル山脈が最終防衛ラインとなった。
この結果、各方面をつなぐ交通の中心として最前線の要となった軍需都市ツァリーツィンでは、以後半年以上のあいだ激しい防衛戦が繰り広げられることとなる。オラーシャ第62軍(旧第64軍)のほかカールスラント第6軍(パウルス大将指揮)、第4装甲軍、オストマルク軍などからなる守備部隊は、航空ウィッチの支援のもと抵抗を続けたが、やがて補給の困難と激しい消耗のすえに孤立していった。
反攻作戦の実施
北方では、折しも本国を脱出したカールスラント軍がバルトランドやスオムスに多く残っていた。そこで1941年6月、このカールスラント軍とウラル戦線で東西からネウロイを挟撃する“バルバロッサ作戦”が実行に移される。各国軍はペテルブルグを奪還し順調に進撃したものの、新たにカールスラント方面にネウロイの巣が発見されると、要衝リバウがネウロイの攻撃にさらされることとなる。このためバルト海航路が閉ざされ、補給に困難が発生。冬には作戦の続行が断念され、最終的にペテルブルグを反攻作戦の橋頭堡として維持するに留まった。
いっぽう、南方でもこのバルバロッサ作戦に呼応し、ツァリーツィンの救援とドネツ川までの戦線押し上げを目して“タイフーン作戦”が実施される。作戦のために100万のオラーシャ軍が動員され、悪天候にも助けられて無事にネウロイの撃滅とツァリーツィン守備部隊との合流を果たした。各部隊はさらにロストフを目指し進撃を続けるが、冬季の豪雨による泥濘によって速度は鈍り、さらに川の凍結が地上ネウロイの進攻を助けたために戦線は膠着する。事態を前に、作戦の第一目的であるツァリーツィン救援は果たしたとしてタイフーン作戦は終了となり、撤退と防衛線の再編が行われた。
“グリゴーリ”破壊へ
両作戦の終了後、北方の橋頭堡ペテルブルグには“バルバロッサ作戦”参加ウィッチを基盤として第502統合戦闘航空団<ブレイブウィッチーズ>が、ウラル戦線のチェリャビンスクには“タイフーン作戦”に参加したカールスラント空軍JG54を中心に第503統合戦闘航空団<タイフーンウィッチーズ>が、南方バクーにはツァリーツィン経由で撤退したウィッチたちにより第505統合戦闘航空団<ミラージュウィッチーズ>がそれぞれ結成される。東方からはシベリア鉄道を経由した扶桑皇国の支援も受け、オラーシャ戦線を囲むように防衛と反攻の拠点が整えられてゆく。
1944年秋、北方バレンツ海に突如として新たなネウロイの巣(“グリゴーリ”と呼称)が発生し、ペテルブルグを指して移動を始める。北極海経由の補給ルートが絶たれ、ペテルブルグも直接の危険にさらされる緊急事態であった。これに対し、翌年春、ペテルブルグ軍集団(北方軍集団)と502JFWが中心となって“フレイアー作戦”を実施。激戦の末“グリゴーリ”の破壊に成功し、人類で二番目となるネウロイの巣の破壊例として、各戦線に希望を与えた。
軍事力
頻発する怪異と長く戦ってきたことや人口の多さから、陸軍を中心に膨大な兵力を有する。砲兵、特に大口径砲を非常に重視する、火力戦志向の編成となっている。
海軍は不凍港の不足もあって基本的に沿岸海軍的で、戦艦と潜水艦が主力を担う特異な編成。戦艦は練度と外洋遠征能力が不足し、ネウロイ相手の兵器としては使えない潜水艦の大多数も港に留まっており、どちらも戦況に大きな貢献はしていないようである。
独立した空軍を編成するが、陸軍も大規模な航空部隊を有する。航空機・航空ストライカーユニットの開発・製造においては、大戦以前のオラーシャの航空産業政策の結果、国家機関である設計局により開発され、国営工場が製造を担当する構造となっている。設計局は複数あり、著名なものとしてはYak-1を開発したヤコヴェンコ設計局、MiG-60やMiG-225を送り出したミール・ガスゥダールストヴァ設計局、大量生産された傑作機Il-2の設計元であるイリューヒン設計局などが挙げられる。
ウィッチ
そもそもの人口の多さ、皇帝家を中心にローマ帝国の伝統を受け継いできたこと、そして黒海方面での対怪異戦闘経験の長さから、ウィッチは多く輩出している。なかでも、陸上で装甲歩兵を担う陸軍所属のウィッチの比率が高い。装甲歩兵の装備自体は他国とさほど変わらないものの、オラーシャ軍全体を支配する砲兵重視思想の影響か大口径砲の装備例が多く、航空ウィッチが比較的不人気なのも大口径砲の携行が難しいことが理由にあるとみられている。
陸軍では時として100mmを越える口径を持つ重砲にもウィッチが配置されている例があるが、そもそも装甲歩兵として運用できる規模の砲ではなく、ストライカーユニットも使用しない砲手としての役割にすぎないため、論理的な理由あっての配属かどうかは不明とされる(命中精度の向上や象徴的意義は指摘されている)。第二次ネウロイ大戦初期には、ツァリーツィン防衛戦時に同地の兵器工場で働いていた少女たちが魔法力に目覚め、陸上装甲歩兵として戦闘参加するといった出来事もあった。
航空ウィッチは陸軍と空軍の双方に所属している。航空戦技の面では遅れていたが、第二次ネウロイ大戦勃発後、アレクサンドラ・I・ポクルイーシキンによってようやく体系化された空戦技術が紹介されるに至った。ストライカーユニットは大戦初期こそ時代遅れの機体が多かったものの、カールスラントや扶桑の支援をうけつつ積極的に独自開発が進められ、やがては主要国並みの一流ユニットを送り出すに至っている。
本国の状況から、統合戦闘航空団へのウィッチの派遣はオラーシャに展開する502JFW、503JFW、505JFWが中心。欧州方面に派遣されているウィッチの場合は部品の補給が難しく、現地仕様に改装したり、オラーシャ製ユニットの使用が盛んなスオムス経由で部品供給を受けることも少なくないという。
作品への登場
オラーシャ諸地域のうち軍港都市リバウは、扶桑海軍のエースウィッチ三人組の異名“リバウの三羽烏”、竹井醇子の異名“リバウの貴婦人”、西沢義子の異名“リバウの魔王”という形でしばしば登場し、当時の思い出がドラマCDの回想などで語られることも少なくない。アニメ『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』では、1945年秋当時の502JFWリバウ基地が登場した。
アニメ『ストライクウィッチーズ劇場版』および『ストライクウィッチーズ Operation Victory Arrow』Vol.3では、ペテルブルグ近郊の502JFW前線基地が描写されている。アニメ『ブレイブウィッチーズ』はオラーシャが主な舞台であり、ペテルブルグの街と502JFW基地、ムルマンやノヴォホルモゴルイの港などが描かれた。前日譚である小説『ブレイブウィッチーズPrequel』でも同様に登場。
アニメ『ルミナスウィッチーズ』では、1944年夏当時のチェリャビンスクが第7話の主要な舞台として登場し、欧州方面からの疎開者が街の建設に奮闘している様子が描かれた。
この他、“秘め歌”(キャラクターソング)として、『劇場版』秘め歌コレクション1において「オラーシャ空軍 航空行進曲」が収録されている。原曲は「航空行進曲(Авиамарш)」。
主要な国家説明は『ストライクウィッチーズ』DVD特典「全記録」第四集、航空機設計局の詳細については『ストライクウィッチーズ2』特典「全記録 弐」第四集に収録。
第501統合戦闘航空団
アニメ『ストライクウィッチーズ』などで描かれる第501統合戦闘航空団<ストライクウィッチーズ>(配置はブリタニア→ロマーニャ→ネーデルラント)には、1名のウィッチを送り込んでいる。
第502統合戦闘航空団
アニメ『ブレイブウィッチーズ』で描かれる第502統合戦闘航空団<ブレイブウィッチーズ>(オラーシャ)には、1名のウィッチを参加させている。
連盟空軍航空魔法音楽隊
『ルミナスウィッチーズ』の舞台である連盟空軍航空魔法音楽隊<ルミナスウィッチーズ>には、1人のウィッチを所属させている。
その他の多国籍部隊
上記のほか、第503統合戦闘航空団<タイフーンウィッチーズ>(オラーシャ)には、2名のウィッチが所属している。
第505統合戦闘航空団<ミラージュウィッチーズ>(オラーシャ)には、1名のウィッチを派遣している。
非ウィッチほか
アニメ『ブレイブウィッチーズ』6話では、アレクサンドラ・I・ポクルイーシキンの母オリガ・エレメエヴナ・ポクルイーシキンと祖母リュドミラ・コンスタンチノヴナ・クラサフチェンコが回想および写真という形で登場している。
アニメ『ルミナスウィッチーズ』7話では、サーニャ・V・リトヴャクの母アンナ、父ヴォロージャが登場している。
関連動画
関連項目
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